Neetel Inside 文芸新都
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 槍。速い。突き出しから急所へ飛び込んでくる速度が、並では無い。小僧め。
「殺戮の国、エクセラがッ」
 鎧を掠めた。剣を構える。攻撃に転じる。
「お前を討てばッ」
 切っ先が、鎧を削った。火花が散る。首を掻き切るつもりで、剣を横に薙ぐ。男は仰け反り、それをかわした。
 馬と馬が押し合っている。至近距離。剣の方が有利だ。
「小僧、命は大切にしろ」
 柄尻で胸を突いた。男が姿勢を崩す。次の瞬間、電光石火。見えたのは火花。
「それは僕のセリフだ」
 槍の柄で、剣を受け止めていた。運が良いのか、実力なのか。
「ちっ」
 剣を押し込み、距離を広げる。デンコウ、駆けろ。追ってこなければ、勢いを付けて叩き斬る。追ってくれば。
 デンコウが反転し、駆けた。男は動かない。追って来ないのか。
「追ってくれば、弓矢で終わらせたものを」
 反転。勢いのついた斬撃は、槍ごと叩き斬れる。
「ッ」
 その瞬間だった。矢が頬を掠めた。男が弓を構えていた。ニ射目が来る。
「小僧が」
 構わず駆けた。矢など視認できる。俺には関係が無い。
 矢。首を横に倒し、それをかわした。剣を振り上げる。
「僕をなめるなと言ったはずだッ」
 突進してきた。あの白馬、気性が攻撃的だ。デンコウに怯まずに向かってきた。勢いが消され、剣を振り切れない。
 交差。火花が散った。中途半端な攻撃だ。駆けた意味が無い。
「何でお前らエクセラは皆殺しにするッ」
 反転。今度こそ、勢いを付ける。
「神王がそうしろと言ったからだッ」
 槍。やはり速い。避けるのに集中しているせいで、急所に向けて振り切れない。だが、それは奴も同じ事。
「お前は神王の言いなりかッ」
「小僧に何が分かるッ」
 反転。あの男、戦闘センスが良すぎる。あの若さで。
「エクセラが何をしているか知りもしない奴が将軍なんてッ」
 片手で剣を持ち、片手で手綱を握った。攻めの方向を変える。あの男は強い。
「そんなもの関係無いッ」
「何故、お前はエクセラに与するッ」
 大した理由などない。父がエクセラの将軍だったから。生まれた場所がエクセラだったから。いや、何より俺は。
「戦がしたいからだッ」
「お前のような奴が居るから、平和がいつまで経っても訪れないんだッ」
 交差。片手だとさすがに痺れる。力もあるのか、あの男は。手綱を引き、馬首を巡らせた。男は流れで駆け去っている。追う。弓矢で仕留める。
「平和を望むなら、エクセラに降れば良いッ」
 男が身体をひねった。手には弓矢。信じられない。即座に対応してくるのか。
 構うものか。弓矢の腕なら、俺の方が上だ。奴は槍を持ちながら狙撃しなければならない。俺の方が有利だ。
「馬鹿な事をッ」
 剣を歯でくわえる。矢をつがえ、奴の身体に照準を合わせた。互いの馬の振動で、狙いが上下する。
「戦う意味を考えろ、エクセラッ」
 矢。身体をひねってかわす。間髪入れず、こちらも放った。だが、よけられた。動体視力も良いのか。
 二射目。矢をつがえようとしたが、男が、白馬が距離を離してきた。すでに奴は弓矢を収めている。
 射撃戦では決着がつかない。やはり、剣と槍。これで勝負をつける。
「意味など必要ない。戦が出来ればそれで良いんだッ」
 全速力。デンコウ、駆けろ。勢いを目一杯つけろ。
「圧倒的有利な国に従って、戦がしたいなどッ」
 火花。交差はしない。鍔迫り合いだ。力の強い者が勝つ。
「何とでも言え・・・・・・。俺は、父の・・・・・・父の名で」
 親の七光りだ。だから、何がなんでも功績を挙げなければいけないんだ。この兵力で、お前たちに勝たなければ。
「いつまでも腐った男だッ」
 押す。小僧に負けるほど、非力ではない。剣の距離。斬れる。
 瞬間、白馬が後ろに下がった。そんな馬鹿な。馬が下がるなど。槍の距離だ。急所に飛んでくる。
「串刺しだッ」

       

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