Neetel Inside 文芸新都
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九月八日(FRI)午後八時〜九月八日(FRI)午後十一時三〇分

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九月八日(FRI)午後八時

 …
 ……
 ………
 …………遅いッ!
 お兄ちゃん帰って来ない!
 何?
 なんで?
 もう八時なのに――
 はっ。
 ああ。
 あの……
 あの、女……!!

「ただいま」
 お兄ちゃんは帰って来た。
 あっさり。
「? なんだよ」
「う、ううん。なんでもない。お帰りなさい」
 なんだか恥ずかしくなって、ぼーっと顔を見てしまった。
 恥ずかしすぎるよぉ。
 だけど……それを超えなきゃ。
 お兄ちゃんとセックスするためには。
 あたしは階段を上り出す。すると、お兄ちゃんの声が背後から。
「メシは?」
「あれ、食べてこなかったの?」
 彼女と――あたしは、続きをなんとか飲み込んだ。
「ああ。友達んち行ったけどさぁ、あいつ何も出しやがらねぇの! 腹減ったわ!」
 あたしは、なんか、嬉しくなった。
 単純なものだね。

九月八日(FRI)午後十一時五分

 お兄ちゃんがお風呂を上がったみたいだ。
 階段を上がってくる、足音。
 心臓の音と同じ感じ。
 とん、とん。
 とく、とく。
 ちょっと違うけど、感じが似てる。
 扉が、開かれた。
 お兄ちゃんはこの後、どうする。
 ベッドにすわる? それとも、パソコンの前?
 ――多分、いや間違いなく、ベッドだなあ。 
 お兄ちゃん、パソコンほとんど興味ないもんなあ。
 しかし! そんなことは予想済み!
 先にケータイにメールを送っておいたんだ。
「これ読んだら昨日のチャット部屋に来て!」ってね。
 さあ、来てくれるかなあ?

九月八日(FRI)午後十一時三〇分

 来ません。
 お兄ちゃんが、来ません。
 あたしは、二十分も前から入室しているというのに。
 もう、馬鹿。
 馬鹿!



和也が入室しました



 来た!!



和也:来たぞ。23:32
和也:明日朝早いからすぐ寝るからな23:32
miya:キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!23:33
和也:なんだそれ?23:33



 さあ、言うぞ。
 時間はないみたいだし……言わなきゃ!
 言うよ、真琴さん!



miya:あのね、お兄ちゃん?23:34
miya:聞いて欲しいことがあるの
和也:手短にな
miya:あのね……23:35



 ――指が。
 動かない。
 凍ってるみたいだ。
 …書いたら。
 書いてしまったら……
 …関係が、壊れちゃう。
「兄妹」という関係が、確実に。
 ――怖いよ!



和也:おーい23:40
和也:眠いよ23:41



 怖い……怖い……怖い――
「あたしは結局セックスできないまま――」
 ――イヤ!
 あたしは、したい!
 お兄ちゃんに、女の子として愛してもらいたいんだ!



miya:セックス23:42
和也:え?
miya:したい
和也:何言ってんだ?
miya:お兄ちゃんとセックスしたいの!23:43



 言った。
 言っちゃった。
 さあ、お兄ちゃん。
 答えて。
 答えてよ!
 もう、あたし、壊れ――



和也:キモいぞ23:45



 ――キモい?
 キモい。
 あたし?
 キモい?
 キモいの?
 あたし――
 ――あたし?
 はは。
 なにそれ。

       

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