Neetel Inside 文芸新都
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九月八日(FRI)午前七時〜九月八日(FRI)午後二時三十六分

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九月八日(FRI)午前七時

 久々に、母親と会話をした。
 内容は、この際置いておく。
 重要な事柄は、修学旅行の金を渡してくれたことだけ。
 五万円、裸で渡された。
 袋に入れて渡せよ。
 空気のような母親。
 だけど、実際問題、いないと凄く困る母親。
 ――俺は無言で、五万円を半分に折り曲げて、ズボンのポケットに突っ込んだ。

 都子は、まだ降りてきていない。
 昨日(正確には今日の出来事だったが、まあそれは置いておく)の今日だけに、少し気になるは
なるものの、ただの寝ぼうだろ、どーせ。
 と思って、俺は身支度を整えた。

九月八日(FRI)午前十一時二十八分

 今日は、修学旅行の最終確認に費やされていた。
 まあ、色々と教師とか、旅行会社のスタッフの人が話しているわけだけど、ちゃんと聞いている
奴は、多分あんまいないだろう。
 皆、どこか浮ついていた。
 きっと、俺もだ。
 考えることは多い。
 馬刺し。
 ジンギスカン。
 札幌ラーメン。
 牧場見学。
 馬刺し、なんて言っててなんだけど、一番好きな動物は、馬だ。
 あとは、忘れちゃいけない大事なこと。
 麻子とどうやってエッチするか。
 今、ポケットに入ったままの五万円と、コンドームだけは。他の何を忘れようとも、これだけは。
 絶対に、忘れないようにしないと。
 今日はずっと、ズボンに手を突っ込んでいた。
 麻子を思い、勃起したペニスの熱さを、直に感じている。
 それは、右手にとって慣れ親しんだ熱さ。

九月八日(FRI)午後二時三十六分

真琴:おいすー
miya:おいすー
真琴:昨日はどうだった? お兄さんとお話できたみたいだけど
真琴:ここのチャットって外から何を話してるのか見えないのよね
真琴:そこがいいところでもあるんだけど
miya:話せたけど、普通の話しか出来なかったよぉ
miya:真琴さんに話したあれとかそれとか(…異常なテンションだったから、スゴイ恥ずかしいこ
としゃべってたかもだけど……)全然、言えなかった
真琴:最初は、まあいいんじゃないかな
真琴:でもね、早いうちに言わないと、段々言い難くなってくるから……あたしはそうで、結局お
兄ちゃんとセックスできないまま終わっちゃった……

「セックス」
 あたしは、これをお兄ちゃんとしたいと思ってる。
 まだしたことないけど、でも、初めてはとても大事らしい。
 大事だからこそ、あたしは、お兄ちゃんにあげたい。
 もらって欲しい――

miya:あたしはね、凄く、したいと思ってるんだ
miya:きっとあたまがおかしいんだろうね
miya:でも……したいの
真琴:おかしくないよ
真琴:人が人を好きになるのは、当たり前
真琴:それがたまたま、実の兄だったという、それだけの話なのよ
真琴:本当に、それだけのこと

 あたしも、そう思うよ。真琴さん。

miya:…あたしね、今日言うよ
真琴:面と向かって?
miya:それは……(笑)
真琴:(笑)
miya:チャットで、言う。セックスしたいって……ハッキリ言うよ!

 そうだ。
 あたしは言える。
 絶対に、言えるんだ。

       

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