Neetel Inside 文芸新都
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彼女はロボット
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 太陽が傾いて世界が夕暮れ色に染まっている時、僕と彼女はベンチに横に並んで座っていた。
「私……タクミさん、一緒にきちんとお話できるようになりたい。本当の心……ほしい。」
彼女は僕にそう言った。彼女は人工知能を搭載したロボットなのである。しかし、細部まで精巧に作られているし、とても可愛いくて僕はそんな彼女が好きだ。
「うん。僕が必ず君の心の素をとってくるから安心して。」
うんうんと頷いて彼女は納得してくれた。彼女は頭が僕の数倍もよく働くし、何でも知っている。ただ本当の心が無いだけなのだ。
 それから僕と彼女はゆっくりと抱き合って、だんだん太陽が沈んでくるにつれて、激しくキスをした。辺りが真っ暗になると、彼女は僕の勃起したペニスを右手で握って、最初はゆっくりから、徐々に早く動かした。ペニスを口の中へ入れることもあった。
僕が射精し終わると、何度もいやらしく舐めてきれいにしてくれた。彼女はとても上手なのだ。
「すごく気持ちよかったよ。」
僕は素直に思ったことを伝えた。
「私なんといっていいかわからないんだけど、なんだかすごい恥ずかしいわ。」
時たま僕は本当は彼女が普通の人間で、ちゃんとした心を持っているのかと思うときがある。それは限っていやらしい事をしている時なのだ。
それでも、僕は彼女のために心の素を手に入れなければならない。それが彼女の願いだからだ。
 心の素を手に入れるためには、深い水路のある暗い森の中を奥へ進み、高さが何十メートルもある高圧電流の流れた柵を越えなければならない。そして、クマの「ぷー」と対決して勝たなくてはいけないのだ。彼女が僕に教えてくれた。
僕は行く決心をした。そして出発前に、もう一度彼女に手でやってもらった。本当に彼女は上手なのだ。
二度の射精で少し足元がフラつきながらも、彼女のために一歩ずつ前へと進んだ。夜空には小さな光の粒が一面に広がっていた。
ようやくの事で、最初の難関である深い水路にたどり着いた。しかし、辺りには一本も木は生えておらず、ただ深い水路が長く続いているだけだった。暗い森は森林伐採によって刈り取られてしまっていたのだ。僕は難なくこの水路の縁を通って、とてつもなく高い柵へとたどり着いた。僕は高圧電流で感電死してしまうかもしれないと恐れていたが、政府の消費電力を削減する方針で、柵に電流は流されていなかった。今度は、少しばかり上るのに苦労したが、降りるときは生えていた蔓につかまってスルスルと降りたのであっという間だった。僕はあんまりにも簡単なので、余裕が出てきた。 後はくまの「プー」から心の素を手に入れるだけなのだ。
 柵を越えてしばらく進むと、小さな小屋があった。まだ部屋に灯りが見えたので、ノックをして入った。僕はそこにくまの「ぷー」が居るのだと思っていた。
 「やぁ、君も心の素を手に入れに来たんだね」
そこには博士が居た。白い髪の真ん中に大きハゲのある博士だ。今日はいつもの白衣姿ではなく、いかにも猟師といった服装だった。実を言うと、この博士が彼女を作ったのである。
「君のお陰で散々な目にあった。私はなんとしても心の素を君より先に手に入れて、彼女を自分の方に振り向かせなければならないのだ。」
博士はなるべく平静を保つような姿勢をみせていたが、その表情はいたって穏やかというわけではなかった。

     

彼女が作られた日、僕は博士の研究所の裏で野球をやっていた。もちろん友達は一人もいなかったので、研究所の壁にぶつけて遊んでいた。そして、ちょうど百回目のボールを投げようとした時に、とつぜん青白い光が僕の目を襲った。投げそこなったボールは、研究所の窓を気持ちのいいくらい透明な音をたてて粉々にした。目がようやく元に戻っても、僕の頭はしばらく混乱していた。それでも、ボールを取ってこないといけないということはわかっていたので、こっそりと割れた窓から侵入した。建物の中は手術室に似ていた。ひんやりとしていて、歩くとコツンと周りに響いた。僕は辺りを見回した。手術台のような台の上には全裸の女の子が仰向けに寝ていて、そのすぐ横の床には白衣を着た白髪の老人が頭に特大の瘤を作ってうつぶせに寝ていた。
予想外の状況に僕の頭はますます混乱した。それでも、裸の女の子をずっと見つめる目だけはしっかりしていた。
「あなた……、だれ?」
全裸の女の子が突然ムクっと起き上がって言葉を発したので、僕はタクミだよと、慌てて答えた。彼女はコクリと首を縦に振った。そして、彼女はまた仰向けになって寝てしまった。

 それが僕と彼女の関係の始まりであった。

それからしばらくの間、僕は彼女のかたちの良い乳房や、陰毛を交互にみて、どうしたものかとオロオロしていた。女の子の裸を見るのはこれが初めてだった。興奮のしすぎで勃起したペニスが破裂してしまわないか心配だった。
今度は博士がゆっくり起き上がり、瘤のできた頭を摩りながらやれやれと言って、周りを見まわした。
少しの間があって博士は全てを理解したようだった。それから、僕はこっぴどく叱られた。博士の顔色が赤から紫に変わって、そして最後は悲しみを帯びた青になった。
博士は、彼女が実はロボットであることや、最初に見た人間を恋人と思うように作ってあるとか、生まれてこのかた七十年間も苦労して作ったのだということをもうほとんど泣きながらに説明した。どうにもしかたないので、結局彼女は僕に任されることになったのだ。

     

「それじゃあ、お先に」
そう言うと、博士は小屋の奥に立てかけてあった猟銃を一丁手にして、外へと出て行った。僕は小屋の窓からぼんやりと見える博士の姿を見ていたが、僕もこうしちゃいられないと思って、猟銃を手にして外へ飛び出した。
くまの「プー」は動物園のような檻とは違って、東京ドームぐらいある広い平原の中に居た。くまの「プー」は名前とは裏腹に、この世の恐ろしい動物を全部足してそれでも足りないぐらいの凶暴なくまであった。
僕より先に行っていた博士は、アッという間にくまの「プー」に食べられてしまって、骨もきれいに食べつくされてしまった。僕は尻込みした。それでも、彼女のために心の素を手にしたい一心で、くまの「ぷー」へと突進した。猟銃の使い方はまだよくわからなかったし、突進以外にいい方法が思いつかなかったのである。恐ろしい程長い鉤爪が僕の服をボロボロに引き裂いてしまったが、なんとか間一髪でかわして食べられると言うことは無かった。
突進がくまの「ぷー」には効果的だったのである。僕はもう一度力を振りしぼってくまの「ぷー」に突進した。しかし、今度は体中が深い切り傷だらけになって、血が吹き出た。左手が足元に出来た血の海へとポチャンと落ちた。僕はもうこれは完全に負けたと思った。白旗を揚げて降参した。

 気がついたら、ふかふかのベットの上に寝ていた。ほんのりと甘いにおい、桃色のカーテン、沢山の可愛らしい人形。ここはどこだろうか。僕はふと自分が負けてしまったことをぼんやりと思い出していた。体の痛みは感じられなかったが、惨めさで一まわりも二まわりも自分が小さくなってしまったように感じた。彼女に合わせる顔が無い。
やがて僕の視界を遮るようにして彼女が現れ、僕を優しく抱いてくれた。まだ外は明るいと言うのに彼女は全裸だった。そして、彼女のやわらかい肌のぬくもりが直接伝わったので僕も全裸だとわかった。僕は、ゆっくりと彼女のよく濡れたヴァギナの中へ吸い込まれるように入っていった。まもなく僕は初めて彼女の中に射精する。

       

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