Neetel Inside 文芸新都
表紙

たゆたう
第五章 うつろはのへやのわたしたち

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第五章 

















壊れてしまった未来へ まだ壊れてなんかいない未来へ
過去を紡ぎつづけ 今を繰り返し 重ねる
ほころびを直そうとして亀裂を深めるか いっそほころびごと切り裂いてしまうか
どちらにしろ 元に戻るものなんてありはしない
ありはしないが そこに在った確かなものは 記憶というるつぼの中で永劫に生き続ける
変わり続ける未来と 変わらない未来の狭間で
決して変えられない未来の欠片と 変わってしまう過去の欠片のつぎはぎの中で
僕がいて 君がいない 続く けれども続くこの世界で















     :               :

 白い壁。白い服。そして赤い十字架。病院というものにいいイメージを持とうとすればそれは誕生の場所であり、治癒の場所。でも幼い頃に病院へ足繁く通っていた私にとってはその逆の、悪いイメージの方が強い。死と病気と怪我の集う陰鬱な場所というイメージ。

 母や姉に病院に連れられて来る時、いつも私は陰鬱な気持ちだった。ここは私のための苦い薬が出される場所であり、痛い注射が打たれる場所であり、そして最悪の場合、入院という監獄の場であったのだ。まぁ、病院に肯定的なイメージを持っている人もいるだろうからあくまで「私にとっては」であるけど。

 だけど今の私は病院の匂いに懐かしい嫌悪を覚えながらも、抱いていたのはそういった気持ちだけではない。感じていたのは不安と期待。そして期待のほうが強かった。

 病院に入るまではそんなことを思っていた。入ってから私は私の抱える不安と期待の両方が膨らむのを感じた。頭の中を過る幾本もの思考の線。そして胸のドキドキを抑えながら私は受け付けを捜す。病院という場所に馴染みのある私だけど今日ここに来たの自分のためではない。私はある人に会いに、いや違う、ある人を捜しに、ここへ来たのだった。
「あの…すいません。」
 受け付けを見つけ、私はそこにいた事務らしき女の人に尋ねる。長い髪が印象的で知的な感じの漂う女性である。
「はい。なんのご用ですか?」
 サラリーマンのような服装からして、この女の人は看護婦さんとは違うんだろうなと思った。子供の頃から思っていたけれど病院にはお医者さんや看護婦さん(看護士さん?)に限らず他にも色々な職種の人がいるんだろうか、と思う。例えば経営担当の…パソコンが友達のお仕事の人。他にも、そうだな、マッサージ師さんとかもいるのかもしれないな。愛想良く私に応対する受け付けの女の人を見ながら私は勝手に想像を膨らませた。
「佐々原周一さんという方がこちらに入院しているか知りたいのですが。」
 私はそう一気に言った。というよりも事前に用意していた頭の中のテキストを一気に読破したという感じ。だけど言ってから「言ってしまった」と思う。まぁ、最初から言うつもりだったから後悔することもないのだけど、それでも「言ってしまった。」という想いが強く私にのしかかる。
「えーと。あなた高校生?」
 受け付けのお姉さんは私にそう尋ね返した。「はい。」と私は機械的に答える。
「その人…えーと佐々原さんでしたね。その人との関係は?」
 事務のお姉さんの質問は続く。けど多分これは儀式的なものだろう。私はドキドキの止まらない自分に「あせらなくても大丈夫」と告げる。
「えっと、友達です。お見舞いがしたくて…でも、その…私、部屋の番号知らなくって………」
 ぎこちなくもなんとか私はそう答えた。
「うーん。悪いんだけどそういうのは本人か身内の方の許可なしにはちょっとねぇ。あなたを信じていないわけじゃないのだけど。」
 そんな…と思う。せめてここにいるのかどうかぐらいのことは教えて欲しい。
「ごめんね。その人の身内の方に電話か何かで聞いてくれるかしら。何かあった時に病院の責任問題うんぬんってことにもなるのよ。ほら最近はなにかと物騒だからさ。」
 そうしてお姉さんは私にトドメを刺したのだった。

 リトルバイリトル。少しずつ、少しずつ時間が過ぎる。嫌いな病院の空気の中、好きなあの人の影に彷徨って。途方に暮れる私はそのまま何も出来ないまま、ただただ受け付けの前に並ぶ椅子に突っ伏していた。
 このまま帰りたくない。だから今の私にできる手は一つ。一つ一つの病室を調べて周る。それだけ。恥じを忘れてやるかな。でもそこまでやるんだったら周ちゃんの家に電話を掛けるのに必要な勇気と同じような気もする。
 何の行動を起こせないまま、私はボーっと自分の記憶を巡らせる。中学を卒業した私は彼とは別の道を歩むことになった。同じ高校生ではあるけれど違う学校。いままで近くにいた彼は遠くのどこかへ。好きだったけれど、告白してそして「ずっと一緒にいようね。」とまでする気にはなれなかった私。好きだったけれど恋はしていなかったのだろう。それともそれはやっぱり恋だったのだろうか。たとえ淡い、自然消滅するような恋であっても。
 周ちゃんと疎遠になった私は、しかしある日、ある〈噂〉を耳にする。周ちゃんが入院したという噂。どう回って来たのかはわからない。最初私は中学生の頃の友達から聞いたのだけど、その子も確証があったわけではなかった。それにその子にとって、その話は同じ中学だった私との会話を盛り上げる程度の、ちょっとした小話のつもりだったのだろうと思う。だけど私はそれを無視できなかった。どうにかして確かめる必要があると思ったのだ。そしてそんな根も葉もない噂に翻弄されているのだ。その結果今ここにいる私。
 ああ、胸が痛い。言葉のあやではなく現実に胸がズキズキしてきた。ドキドキズキズキ。ちょうどここは病院だからこのまま看てもらおうかな、と思う。
 〈噂〉を確かめる方法はいくらでもあった。それこそ周ちゃんの家に電話を掛ければ一発でわかることなのだと思う。でもあまりことを大きくしたくないし、何も無いなら何も無いで済ませたいと思う弱虫で臆病な私がいるのだ。だからそんな私はできるだけ周ちゃんと私との繋がりのない所から当たりたかった。この病院に来たのも「まぁ、入院するとしたら周ちゃんの家から一番近いここだろうな。」という程度の発想だった。
 あさはかな考えのまま来てしまった。そう思う。しかもそのあさはかな考えが肯定はおろか否定すらされていないことが私をさらに悩ませる。事務のお姉さんが恨めしい。
「佐々原さーん。」
 思考の途中、私は私の名前を呼ばれたわけでもないのにその声にビクッと反応してしまった。
「佐々原さん。ちょっといいですか。」
 見るとさっきの事務のお姉さんが受け付けを出て別の女の人と話しをしていた。私はかすかな期待で二人を眺めていたのだけれど、二人の会話は途中から普通の音量になり、そして私は聞き取れなくなってしまった。けれども私は二人を眺め続ける。
 不意に会話をしていた二人がこちらを見る。私は〈佐々原さん〉と目が合ってしまった。。
「ねぇ。あなた。」
 そして突然、事務のお姉さんが私の方へ歩いてきて私を呼んだ。
「はい?」
 私はちょっと虚ろになりかけていた意識をなんとか正してそう口を動かす。
「こんにちは。周一の友達?」
〈佐々原さん〉が私に声を掛けてくる。どうしよう。心臓がバクバクいってきたよぅ。ただでさえ初対面の人は苦手なのに、この人は多分周ちゃんの母親なのだ。
「私、周一の母です。」
 やっぱり…
「私は、その…神楽加奈といいます。周一君とは小学校、中学校と同じクラスで…。」
 私はそこまでなんとか頑張って言えた。周ちゃんのお母さんという人は「あらそうなのー。」と言って返す。
「神楽さんは高校生?」
 さっき事務のお姉さんにも尋ねられた質問だ。二度同じ返事をするのもなんなのでちょっと趣向を変えて私は「はい。十六才です。」と答える。
「お母様。この子に周一君の病室を教えても良いでしょうか?この子お見舞いしたいそうなので。」
 横で私達の会話を静観していた事務のお姉さんが私の代わりに、私の聞きたかったことを〈お母様〉に尋ねた。
「ええ、もちろん。構いませんよ。周一もあなたみたいなかわいい子がお見舞いに来たらすぐに元気になるでしょうし。」
 周ちゃんのお母さんのその言葉に私は「え…ああ、はい。」と曖昧な返答をする。でもこれで私はもうすぐ周ちゃんと会えるかもしれなかった。
「良かったわね。ずっと待ってたかいがあったじゃない。彼の部屋は303号室よ。三階ね。エレベーターはそこの突き当たり。」
 そう言いながらお姉さんはテキパキと指を指して道先案内をしてくれた。でも私は周ちゃんのお母さんや他の誰かを待っていたわけではなく、ただこの場で途方に暮れていただけだけなんだけどね。まぁ結果オーライかな?
「ありがとうございます。じゃあその、今行っていいですか?」
 本当は部屋の番号がわかった時点で行きたかったのだけれど、それはあまりにも失礼な感じなので一応私は二人にそう聞いてみる。
「ええ、いってらっしゃい。周一によろしくね。」
 来た。オーケーサインだ。私は「はい!」と言ってお辞儀をし、そして身を翻した。後ろのほうで事務のお姉さんの「廊下は走らないでねー。」という声がしていた。

ピンポーン サンガイデス

 「ぴんぽーん」とエレベーターの声を頭の中で繰り返す。そして私が出た後にエレベーターの扉が閉まるのをエレベーターを背にしたまま待ち、完全に閉まってクィィィィンという駆動音が出たのを確認してから私は動き出した。
 頭を上げて周ちゃんのいる303号室を捜す。310、318…きっともっと向こう。でももし303号室だけがなかったらどうしよう。304も302もあるのに303だけどうしても見つからない白日夢。でもそんなことを考えるのはきっと心のどこかでそうして見つからないことを祈っている臆病者の私がいるからなのだろう。だってほら、見つけましてよ303。そしてドアノブの上に緑色の画鋲と細めの糸で吊るされたネームプレート。そこには他の人の名前に混じって佐々原周一という私の馴染んだ名前が書かれているのだ。
 私は303号室のドアの前で立ちすくむ。ここまで来てしまったのだから。だからさっさと入ろうよ。でも、あぁ、そういえばお見舞いの品もなにも持っていないな。出直そうか、果物を持って。それとも花束か。いや、そんなものより本でもあげたほうがあなたは喜ぶかな。ねぇ?

私はそうやってドアの向こうの彼に話し掛ける。話し掛け続ける。

「周ちゃん。」
声に出して彼の名前を。ドアの向こうにいる彼の名前を。やっぱり私はあなたに会いたいよ。
「失礼します。」
部屋に入るときの礼儀だと思って、とりあえずそう言って。そして私はドアを開けた。

 白いベットが四つ。仕切りに隔てられて並んでいた。時間的にそうなのか、入り口近くのベット二つの上に人はいない。どうやら外出しているらしい。周ちゃんはここにいるのだろうか。さっき周ちゃんのお母さんが会ったばかりのはずだから、いるならまだここにいるのだろうとは思うけど。
 私は無意識的に忍び足になりながら部屋の奥へ歩を進める。病院といってもまだ日中なので「音一つしないほど静か」というわけでもないのだけれど、場所(というか雰囲気的に)どうしてもそうなってしまう。窓側の患者は一人が本を読んでいて、一人は眠っていた。私は忍び足をもっと忍ばせて、その眠っている方へ近づいた。上から顔を覗き見るとそこには中学生の頃とちっとも変わっていない、見知った顔があったのだった。
 彼は眠っていた。かすかにスースーと寝息が聞こえる。私はそこで何故かほっとして、とりあえず近くにあった椅子に座ったのだった。そして座りながら彼の顔を観察した。ちょっと痩せたような気もするけれど、まぁ元気そうだ。多分大丈夫だろう。うん。きっと大丈夫。だって周ちゃんだもの。そう思った。
 ついにここまで来てしまった。でも起こすこともせず、帰ることもせず。私は周ちゃんの寝顔をじっと見続けていた。でも今ははそれだけで結構満足だった。

 数分後、彼の目が開くまで、私はしばらくそうしていた。

 開きかけた彼の目は、でもしばらくは焦点が定まらないのかマブタを瞬かせていた。しばらくしてぎゅっと一回目を強く瞑り、その後また目を開いて、そしてゆっくりと彼は起き上がった。けど半身を起こしたもののまだボーっとして夢の中なのか、中々動かない。当然私にもまだ気付いていないだろうと思う。でもそんな彼を見ていて私は今まで抱いていた不安が不思議と気にならないものになったのを覚えていた。

「おはよう。」

 ベッドの脇に座る私は彼にそう言った。そしてやっと私に気付いたのか、彼は眠気眼をこちらへ向ける。
「加奈…?うん、おはよう。」
 あれ、周ちゃんって私のことを名前で呼ぶんだっけ?中学生の頃は確か「神楽」って呼ばれていたと思うんだけどな。
「加奈?」
しまった。久し振りなのに返答に困って何も言えていない。
「うん。おはよ。」
 何を言っていいのかわからなかったので私はとりあえず二回目の「おはよう」をした。
「ここは……どこ?」
 周ちゃんはあたりを見回しながらそう言った。
「病院、だよ。」
 まだ入院したばかりなのだろうか。周ちゃんは自分の置かれている環境にまだ適応できていないようだ。それとも眠っている間に病室を移されでもしたのかな。
「あかりとケイは?」
 そういわれて私の方が戸惑う。「あかり」というのは確か周ちゃんの妹さんの名前である。ケイというのは周ちゃんの友達の名前で、彼は私とも友達であるけれど……。私は中学を卒業してから彼にもあまり会っていないのだった。
「二人が…周ちゃんが眠るまでいたの?」
 私の問いかけを周ちゃんは上手く理解できないのか、キョトンとした顔になる。
「ああそうか…。ねぇ加奈は今何才?」
 なんか一人で納得している。そして勝手に話題を変えている。でもまぁつきあってあげよう。話しているうちに目を覚ますでしょう。私はそう思った。
「十六才。周ちゃんも同じでしょ?」
 私がそう言うと周ちゃんはちょっと考えたふうになってから「そうだね。」と言って笑った。そしてなにか気になることでもあるか、一瞬目を瞑る。
「あのさ…夢を見たんだ。加奈が出てくる夢を。」
 周ちゃんはそう言って口を開いた。
「へー。どんな。」
 私は意外な事実に内心動揺しながらもそう言った。だって私達はもうかれこれ一年は会っていなかったのだ。まぁ道端ですれ違う程度のことはあったにせよ、私は周ちゃんにとって忘れられていてもおかしくない存在だと思っていた。でも彼は夢に出てくる程度に私のことを覚えてくれていたのだ。
「あのね…中学生の僕と加奈と、あと僕の妹のあかりと、それから同じく中学生で僕らが一緒だった慧の四人でね、海へ行くんだ。」
 慧とは同級生のケイちゃんの本名である。周ちゃんは私が「うん。」と頷くのを確認してから話を進める。
「その海で僕は君と色々なことを話したよ。ちょっと僕が一方的だった気もしたけどね、うん。」
 そして周ちゃんは〈夢〉の内容をとても楽しそうに話しはじめたのだった。周ちゃんの見た夢の世界。その中にいる私。それはここにいる私ではないけれど…


「私とどんなことを話したの?」
「うん。そうだね…。神様の話とか。」
「随分哲学的なのね。」
「うん。でも楽しい議論だったよ。」
「他には?」
「……ありがとう、と僕が君に言った。」
「なんで?」
「それは秘密だ。」
「ケチ。まぁいいや。他には?」
「ごめんねって。」
「周ちゃんが私に言ったの?」
「うん。」
「なんでよ。なんかしたの?」
「まぁね。でも何をしたのかは秘密。」
「また秘密?」
「また秘密。」
「………他には。」
「フフ。」
「何よ。」
「これは秘密だな。」
「今度は言葉すら秘密なの?」
「そうだよ。」
「言ってみなさいよ。理由は聞かないであげるから。」
「本当に聞かない?」
「聞かないわよ。だから早く言って。」
「好きだよ、と言った。」
「え………」
「僕が加奈にね。好きだよと言った。理由はなかったよ。」

「でも……」
 彼はそう言って続ける。
「全部夢なんだよね?」
 遠くのどこかを見つめて彼はそう言うのだった。そう、残念ながらそれは夢の世界。だって私の記憶にはないもの。でもあったなら良かったのにね、と思う。あったなら…
「そうね…、夢だよ。」
 想いと裏腹に私はそう答えてしまった。でも…別の私が囁く。私が「違う。」と言ったら周ちゃんの語るその「夢」は本当のことになったのだろうか。少なくとも、私達二人だけの世界では。そうなったのだろうか、と。
「あのさ、加奈は今何をやっているの?」
 周ちゃんは笑顔を作って私にそう話を振った。夢の話が気になってうまく話の変化についていけなかった私は「え?」と聞き返してしまう。
「学校とか家でさ。高校生だろう?何をやっているのかなって。」
 今度はゆっくりとした拍子になって、再び彼がそう言った。
「え、と。うん。実は今絵を描いているんだ。学校の勉強じゃなくって趣味でだけど。」
 今度はちゃんと話を飲み込んで返すことが出来た。そう、私は今絵を描いているんだよ。そして本当は趣味じゃなく本格的に勉強してたりもするんだけど、まぁ、まだ人に見せられる段階ではないので趣味のレベルということで。嘘つきじゃないよ?
「そっか。加奈は昔から絵を描くのが好きだったからね。」
 そう。小学生の頃か中学生の頃か。私は周ちゃんと絵の話をしたことがあったっけな。私も彼も授業中にノートの端に落書きをして先生に怒られる人種だったから。そんなふうな昔を思い出して私は言った。
「周ちゃんもでしょ?そういうところ似てるんだよね、私達。」
 周ちゃんは「そうだね。」と言って微笑んだ。なにか今日の、というより久し振りに会った、周ちゃんは記憶の中の彼よりも優しい感じがする。いや、前は優しくなかったというわけでもないのだけれど……。もしかしたら具合が悪いせいなのかな?なんとはなしにそういう結論が私を導いた。
「ねぇ、周ちゃん。病気は大丈夫なの?」
 少し不安になったので私はそう尋ねてみた。
「大丈夫、だよ。」
 笑顔で、軽い感じで、そして即座に、返ってくる返事。そんな感じだったから私はなんだか逆に疑ってしまった。
「ホントに?」
 周ちゃんに「いや、やっぱりダメ。」と言われるのも嫌なのだけれどそう聞き返してしまう。
「うん。だって君がいるから。」
「え?」と聞き返す。正直、冗談なんだろうな、と思った。でも周ちゃんのその言い方が冗談には聞こえなくて、やっぱり私はそういう返事しかできなかった。
「君がいるから。」
 動揺する私に繰り返される二度目の言葉が響いた。
「加奈は僕のところに来てくれたから。だから、僕は大丈夫だよ。」
 周ちゃんは一言一言区切って、力強く、そう言葉を紡いだのだった。
















       

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白時計 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha