Neetel Inside 文芸新都
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あくる日めくる日
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幼馴染の美香が死んで一週間経った。


交通事故で即死だったそうだ。
葬式の日に周りの人たちは皆泣いていたけれどけれども俺は特に何の感情も抱かなかった。
別に美香と仲が悪いわけではない。むしろというかとても仲が良かった。異性だったが唯一無二の親友だと今でも思ってる。
別に美香の死が信じられないとかそう言うのではない。
死んだと聞いたときは何言われてるのか全くわかんなかったけれど時間が経つにつれ葬式の準備が進むにつれ「ああ、死んだんだな」って程度だった。薄情だと思われるかもしれない。けれど本当にそうとしか思えないのだから仕方ない。ただ何かが空っぽになった気分ではあった。

いつものように朝起きて学校へ向う。ありきたりの日常当たり前の毎日。ただ今までと違うのは何時も一緒に登校していた美香が隣に居ない。それだけ。そう、それだけなのだ。
ただ何故だろうか。隣に居ないのに近くに居るような気がする。死んだんだなぁって思っていたときも俺のことを隣で見ていた気がする。
今も近くに居るような気がするのだ。そう、たとえばあの曲がり角の先に。
「いるわけないか」
ただの俺の妄想であってそこにもちろん美香は居なかった。ただ少し期待していた俺も居る。しかし居たら居たで怖いものだ。だって死んでいるのだから。

いつもと同じ道。ただ今日が少し違うのはこれから俺はとてもスケールのでかいことに首を突っ込むことになるのだが。ちなみに不可抗力である。



次の瞬間クラクションとブレーキの音とともに藤村優希は深い闇の中に落ちていった。







目を覚ますと
真っ白の天井が見えた。
あれ? 俺保健室にでもいたのかな? いやでも特に調子は悪い所ないしな。なんで保健室に居るんだろ。
等と考えながらベットから起き上がるとそこは全く知らないところだった。
記憶喪失ではないはずだ。うん。俺の姓は藤村名は優希字は雲長! と、冗談は抜きでここはいったい何処でしょう? 確か俺は学校へ登校中で横断歩道を渡った先から記憶がないんだが。あれ? 記憶喪失?
まぁいい。まずはここはどこかということだ。
周りを見渡すと白い壁壁壁壁。一面の壁。とにかく壁しかないってどいうことですか。後ろを向くと窓がひとつ。窓を開けようと近づく。幸い特に怪我と言うか調子悪いところは何処にもないのでというかいつもより全然元気なくらいである。
窓を開けると爽やかな風が入る。青い空に白い雲。素晴らしい。
下を見ると、はははは! 見ろ! 人がまるでゴミのようだ! 
とてもではないが降りれるような高さではない。降りたら死ねる。楽に普通に死ねる。
まったく。どうしようか。というか壁と窓だけで扉が何処にもないというのは異常だ。どうやって此処まで運んだんだよ。
そういえば服装が違う。確か制服のはずだったんだが。ま、いいか。
当分は何も考えずにぼっーとする方が楽そうだ。という事で俺は眠る事にした。ベットに入って数分後早くも瞼が重くなっていった。
優希は深い眠りへと誘われ――――――。
「おや? 起きていたのかネ?」
――――――なかった。
起き上がって声のしたほうを見ると白衣の男が立っていた。つーか何処から入ってきたんだ。後ろにはドアが開いている。ドアの色は真っ白だ。
「ああ、そういうオチか」
「何がだネ?」
ところでこの口調がおかしい男はいったい誰なのか。
「貴方はいったい?」
「私カ。私はただの医者だヨ。君は交通事故に遭って意識不明だったのだヨ。幸い外傷は特になかったがネ」
なるほど。道理で横断歩道を渡った先から記憶がないはずだ。
しかし何故この人は俺がおきているとわかったのだろうか?
「フフ。それはね閉めていたはずの窓が開いていのと勘だヨ」
白衣の男はまるで優希の心でも見透かしたように言った。
だが優希は別にそのことについてはどうとも思わなかったが。
勘とか。ねぇだろ普通。
程度だった。基本的に細かい事は気にしない。細かくなくても気にしない。
「それじゃあ貴方の名前は?」
「そうだねーふむ…………伊藤と呼んでくれたまエ」
「それじゃあ伊藤先生。そろそろかえってもいいっすか?」
「もちろん君が平気なら別にいいヨ。無事で何よりだヨ」
「それじゃあありがとうございました」
「ちょと待ちたまエ」
俺は伊藤先生に御礼を言って出ようとすると呼び止められた。
早くこの薄気味悪いところから出たかったのだが無視するわけにも行かないので振り向いた。
「何ですか?」
「困った事があったら相談してくれヨ。たとえば怪奇現象とかネ」
あるあwwねぇーよwww
俺は苦笑して出るとエレベーターが見えたのでそこに乗る。
一階を押して扉を閉める。
ごぅんごぅんという音が響く。実は俺はそんなにエレべーターが好きではない。別に恐怖症とかではないが昔幼い頃に一人で乗ったとき何時の間にか隣におじさんがいたのが無性に怖かったのだ。何故だか突然沸いて出たような気がしたからだ。まぁようするにそれがトラウマで嫌いになってしまったという話だ。全く恥ずかしい話なので友人にはばれないようにしたい。今のところはまだ誰にもばれていない筈だ。
無機質なおとともにドアが開く。嫌な時間は終わった。さぁ帰ろう。
「あ、ここどこだろ」
ふと俺は重大な事に気づいた。そもそも此処は何処なのか。
全く帰り道が解からないのだった。




適当にぶらぶらしながら歩いていると同じ学校の制服を着た女性がいた。
家からそれほど遠くではないのかもしれない。
彼女に聞けば道がわかるかもなぁ。
優希は近づいて声をかける。その女性は誰かに似ていた。
「あ――――――ゆうくん?」
その声は何時も聞きなれた声。
優しげででも凛とした声。
それは二度と聞くはずがないと思っていた声。
「み、みかちゃん…………?」
「うん! 会いたかったよゆうくん」
それは一週間前交通事故で死んだはずの東野美香だった。
一週間前と全く変わらない姿でだった。
長くて綺麗な髪を無造作に後ろで縛っただけのポニーテール。
神に愛されでもしたのか素晴らしく整った顔立ちと体型。
ただ惜しいかな。ボンッ! キュッ! ボン! ではなくキュキュボン。
良く言えば控えめな。
悪く言えばというぶっちゃけひんにゅー。
別に貧乳は嫌いではないがやはり男としてはあったほうがいいと思うのだ。
人は突然理解できない事に直前すると正常な判断が出来なくなる。脳がフリーズしてしまうのだ。
優希は意味のない言葉ばかりを並べている。頭の中で。
ようやく落ち着いたのか然しやはり困惑した様子で発した言葉はそれだけだった。
「な、なんで」
「えっ? なんでってゆうくんに会いに来たんだよ」
にこりと微笑みながら彼女は少しずつ俺に近づいてくる。
ゆっくりと。ゆっくりと。
後ろで束ねたポニーテールを揺らして近づいてくる。
「一緒に行こうよゆうくん」
この日この時彼女との再会を機に俺の人生はあらぬ方向へと進んでいく事になる。

       

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