Neetel Inside 文芸新都
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10のメモ帳
命のメモ帳

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今からこのメモに書く文章は遺書になるかもね。
僕はそろそろこの世界よりいなくなるからね。
・・・・・とりあえずなぜこんなことになったか書いておこう。

僕の名前は馬傘 神明
昔からメモが好きでメモ集めをしていたんだ。
もう高校生なのにね。
この趣味は止まることはなかった。
あの日まではね。

あの日僕はいつものように文具店を探し回っていた。
なぜ探しているかって?僕はメモが大好きだからさ。新たなメモをいつも探しているんだ。
もうたいていの文具店は見てまわったからいろいろなメモを持っている。
ちっちゃいものからおおきなものまで、集めた数は1000以上、
これが僕の自慢なのさ。
お金だけはいっぱいある。
僕の祖先は大地主で金だけはいっぱいあるんだ。
だからこんな趣味を持ったのかもね。
おっと、話がずれた。話を戻そう。
今日は裏の路地を探し回っていた。
もう表の通りはほぼ探し回ったからね。
「あまりいい店はないな~」
とおもってたら1つの看板が見えてきたんだ。
名前は「Legend」英語が苦手な僕には読めなかった。
僕はその店の前に立った。そしてドアノブに手を伸ばす。
びりっと僕の中に電流が通った気がした。
僕はすごい力でドアを開けた。
店の中には一人の老いぼれ店主がいた。
店主はムッとした顔でこっちを向いた。ドアを思い切り開けたからだろう。
「いらっしゃい」
僕の体の中を通るような低い太い声で言った。

     

僕はメモ売り場へと向かう。
そこには僕のメモノートの中に書かれていないメモが2つだけおいてあった。
おっと、メモノートの話をしていなかったかな。この中には僕が集めたメモのことが書かれている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 名前         店          ページ数    評価
・Pencilmemo   田中文具店     345ページ   ☆☆☆☆
・男         昭和横町       1000ページ  ☆
・石原工務店メモ 石原工務店     100ページ   ☆☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こんな感じだ。これが約30冊ありその総集編を持って僕は出かける。
そこには50音順にメモの名前が入っている。
何しろ1000個以上メモがあるんだから同じものを買わないように必ず調べるんだ。
さて話を戻す。そのメモにはこう書かれていた
「The truth」
相変わらず僕は英語がわからない。
けど一応英語、日本語順に並べたメモノートの中から最初の一文字「T」を探す。
Thiseudu
Thideuad
Thisedakl
・・・・・・・
ない・・・・な。
僕はその二つの同じメモ帳に手を伸ばす。
えっ!何で二つかだって?
それはひとつは保管用、もう一つは実際に使う用にさ。
あの店主と話すのはいやだけど仕方なく店主のほうに歩いていき僕はその二つのメモ帳をレジの前におく。
「ふぁい?あ~これ?買うの?」
当たり前だ。買わないのに何の因果がありこの前におかなくてはならない。
「あっ。そうです。」
「ほいほい・・・・。」
僕は財布を出して精算が終わるのを待つ。
「・・・・・・二つで10万円ね」
「えっ!」
僕は思わず声を上げてしまった。けどそりゃそうだ。たった二つのメモ帳で10万円。声を上げるのも当然だ。
「かうの?」
「・・・・・・・・・・・。買います。」
ここまで出されると逆に僕のメモ帳集め野郎の血が騒ぐ。
あいにく金はいっぱいあるので(といってもぴったり10万円しかなかったが)このお金も出せる。
「あいよ。このメモ帳には特別な力があるからね。めったなことを書くんじゃないよ。」
「??」
「わかったね?」
「あっ、はい」
一瞬この親父何言ってんだ。とおもったがついつい返事をしてしまった。
僕は店主からメモ帳をもらい店から出た。
「まいどあり~。」
店主はそういった。が返事をする筋合いもないので返事はしない。


続く

     

僕は電車に乗って我が家に向かう。
電車の中、ゆれながらも僕はそのメモ帳が入ってる袋を見てみる。
・・・・・・。こうしてみるとかなりいいメモ帳なのかもしれない。
もしかしたら一枚一枚に金箔が入っていたり、江戸時代からあったメモ帳だったり、王家の宝のメモ帳なのかもしれない。
ふと横を見ると一人の女子高生が携帯で電話をしていた。
電車で電話をするとは何たるもの!とおもったが言うほど僕は度胸がないので黙っていた。
聴きたくもないのに隣の女子高生の声が聞こえてくる。
「ね~、ね~あの噂知ってる?」
「あ~例の噂?」
隣の女子高生の電話の相手もこれまた声が大きいらしく会話がよくわかる。
「あの伝説のメモ帳!マジあるのかな~?」
!!僕の中のアタマのレーダーが立ってくる。何しろメモ帳の話。さらに伝説とくりゃ聞かないとならない。
「何でも書いたことが本当になるんだもんね~。」
「私だったら絶対そこに目猛教師の授業をなくせ!って書くよ!」
「きゃはははは!」
目猛教師というのは悪い教師のことだろうか?名前からしてそんな風におもう。
いや、そんなことよりそのメモ帳の話をしてくれ!
「あのメモ帳の名前って何だっけ?」
「え~っとね。たしか英語でThe・・・・何とかだって。」
「まじ~!ほしいな~!」
そういえば買ったメモも英語で何かかれていた。
ふとあの店で買ったメモ帳を見てみる。しかし袋に包まれ中は見られない。
「もしかしたらこのメモ帳かもしれない・・・・。」
心の中が期待にあふれてくる。
しかしメモ帳の名前が思い出せない。
前に書いたように英語が苦手なので覚えることもできないからね。
光に向けて透き通るようにしてみてみるが見えない。
仕方なく袋を開けようとおもった。
けど袋を開けようとするとその袋と止めてあるテープが鉄のように硬くなりあけることができなかった。
「くそっ!」
僕はついつい声に出していってしまった。
「ふふふっ」
「くすくすっ」
「ふっ」
同じ車両の中にいる人物が静かに笑っている。
「こほんっ」
僕は咳払いをしこの場を逃れた。

続く

     

「次は~練馬~練馬~お下りの方は~お忘れ物のないように~お願いします」
練馬。僕が住んでいる場所だ。僕は席からたちドアの前にたった。
「ぷしゅー」 
という音が鳴りドアが開く。
僕は一目散に出た。改札口に向かって走る。
切符があるポケットに手を伸ばす。しかし、切符がない。
「あれ?」
左ポケット、右ポケット、バッグの中・・・・。
どこを探してもない。後ろを振り向くと待っている人がにらんできた。
「あはははは・・・・。」
僕は後ろに行った。
「近頃の若いモンは・・・・。」
何か言っているが今はそんな暇はない。
もう一度探すがどこにもない。
額に汗が出てくる。何しろさっきのメモ帳でお金は残っていないのだ。
僕はとりあえずトイレに向かった。その中でどうするか考えるのだ。
「どうする。金はない。あるのはバッグとメモ帳のみ・・・・。」
!そうだ、メモ帳があったのだ。もしかしたらこのメモ帳。伝説のメモ帳かもしれない。
袋に触ってみる。さっきとは違い普通の紙だ。
僕はテープに手を伸ばしテープをはがす。
べりべりっという音がトイレの中に響く。
中を見てみる。
「The truth」
さっき女子高生が話していたものと同じように最初にTheがついている。
まさかとおもったが僕は確かめてみることにした。
僕は保管用ではないメモ帳に手を伸ばしバッグの中にある小さな鉛筆をとりそこにこう書いた。
「切符という制度がなくなる。」
(まぁ実現したらすごいな。)
とおもいながら僕はトイレから出た。
一瞬閃光が走った。僕は目をつぶってしまった。
何だ?とおもいながら目を開ける。
「!」
改札口がない。本当に何もないのだ。
僕は恐る恐る駅から出てみる。
「ちょっと~。お客さん!それは犯罪!若いくせに悪いことするのね~。」
「えっ!あ、そうですね~。間違えてました~。すいません、はははは・・・。」
僕は間違えたフリをしていたが内心はパニック状態で
えっ!マジかよ!どうすればいいんだよ!等と考えていた。
どうしようか・・・・。考えても策は出てこない。
そうだ!とりあえず券売機に行ってみよう。変わっているかもしれない。
・・・・。券売機の場所には一人の人が立っていた。片手にはんこを持っている。
「毎度~。こちらは~押し場でございま~す。」
(押し場?なんだそれは?)僕はそうおもいながらもそこに行った。
「まいど!手を出してください!」
僕は言われるがままに手を出した。
「ペタン!」
と音がすると僕の手の甲にうっすらとはんこの絵がついた。
その絵にはこう書かれていた。
「日本鉄道協会認定押しはんこ」
「はい!次の方~」
愛想を振りまきながら押し場の人間はそういった。

続く

     

僕は何がなんだかわからなかった。ただわかることはひとつ。「世界が変わった」ということ・・・。
僕は押し場という場所を出ると急いで自分の家へと向かった。今日はもう寝たい。
一人暮らしだからゆっくりと眠れる・・・。気づいたら家についていた。僕はゆっくりと夢の中へ入っていった。
・・・夢の中で僕は笑われていた。もう一人の僕と・・・。
「お前馬鹿だな~」
もう一人の僕はぼくのことを指差しながら言っていた。
「本当にさ。俺はお前と一緒の俺なんだぜ。俺は俺と一緒なのに俺は・・・。もうめんどくさいや」
「何が言いたいの?」
「要するによ。お前あのメモ帳になんか書いただろ」
「書いたよ」
「その世界の住人の俺だよ」
「?」
「だからさ、う~んと・・・何ていうんだろう。あれだよ。あれ。例えば俺が・・・俺じゃねえや。あんたがあのメモ帳に例えばだな。パンがない世界と書いたとする」
「うん」
「そしたらそのパンがない世界がまた新しく出て来るんだよ」
「どういう意味?」
「だからさ・・・・。この世界は何もかもそろってるだろ」
「うん」
「その中からひとつ何かを抜かすとする。そしたらその抜いたもの『パン』のない世界が新たに出て来るんだよ」
「もうひとつの世界が出るということ?」
「そういうこと。それでその世界にお前はいるんだよ」
「ってことはここに書いただけ世界が現れるっていうこと?」
「そうだ。この夢の中の俺は『切符』がない世界の住人だったということだ」
「あんたは『切符』がない世界の住人だったの?」
「そうだ。だけどその『切符』がないから歴史に狂いが現れて俺の言葉使いが悪くなったんだ」
「ふ~ん」
「もう、俺はいないということになってるんだ」
「その代わりに僕がいるということ?」
「そうだ。けどその世界の住民は夢ではあえるんだ」
「だからあんたと会えたのか」
「そうだ。もっと世界を増やせばこの夢の世界の奴らも増える」
「ふ~ん」
「ただ問題がある」
「なに?」
「俺はお前を殺してもとの世界に行く」
「えっ!」
気づくとあいつは、いやもう一人の僕は何かナイフのようなものを持っていた。
「ヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!」
「やめろ!」
「やだねぇ!お前を殺してやる!ああばあ会うあはうっはひゃはやひゃひゃあはや!」
「うぎゃあああああぁぁ!」

こ今日も僕は夢の中の僕に殺されるのだろうか・・・。
あの僕を殺したい・・・。








追伸
このメモ帳を私は今日見つけた。
彼は部屋の布団の中で変死をしていた。
まるで何者かに殺されたかのようだった。
まだこのメモ帳の話を全てよんでない。
読めば謎は解けるだろうか・・・・。
この事件の・・・。
        警視庁 鑑識 田中 一平

追伸
このメモ帳は一人で謎の死を遂げた青年の全てを語っていた。
どうやらここに書かれていることは本当になっているらしい。
彼の最後に書いた言葉を見てほしい。
「あの僕を殺したい・・・。」
あの僕とは自分のことだ。これにより彼は死んだのだろう。
彼は一人で死んでいたのだ。自殺のようだったが違う。
そう。自分で自分を殺したのだ・・・。
このことがわからない人もいるとおもう。
その人のために事件の新聞を書いておこう。
        警視庁 警部 吉田 益男


       読買新聞
今日、警視庁は傘会社でおなじみの馬傘会社の息子、馬傘 神明の家で神明氏が謎の死を遂げていた。
死体の状況はベッドの上で彼はThe truthというメモ帳を握って死んでいた。片手にはペンを持っていた。
どうやら最後に何かを書いていたらしい。警視庁ではその件について今捜索している・・・・。
The truthというのはわれわれの情報でも引っかからないメモ帳のようだった。
ただわかっていることはひとつ。The truthというのは「真実」という言葉ということ・・・。

       

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Neetsha