Neetel Inside 文芸新都
表紙

ぽちタマ
日常は帰らない

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「早く帰ってきて欲しいのです」
「いってらっしゃい飼い主様」
朝、いつものように二人に見送られて家を出る。もう二匹を二人といっている事や朝見送られる事をいつものようにといってしまっている時点で俺はおかしいのだろうか。
そんな最近。
いつもの風景。いつもの町並み。いつもどおりの教室。おかしいのは世界じゃなくて俺なのか。実は全部俺の妄想だったりしないのか。と、最近妙に考え込んでしまうのだ。鬱ではないと思いたい。
「おおーい和人! 元気ねぇなどうした!」
「大樹俺って頭おかしいか?」
さっきから俺の肩をバンバン叩いてくるのは本宮大樹。俺の大親友だ。軽く紹介すると何時でも俺の事を気遣ってくれていて相談事とかに乗ってくれる超良い奴しかもクラスの人気者で女子にモテまくり。友人の少ない俺にとって大樹ほど素晴らしい奴は見たことがない。
「頭は悪くても別におかしくないだろ。つーかどうしたよ悩みごとでもあんのか? 力になれるかどうかわかんねぇけど話せば少しは楽になれると思うぜ」
なんというか良い奴過ぎる気がする。俺にはもったいないというか。クラスの奴らは大樹が俺と仲いいのが不思議だろう。俺も不思議だ。
「じゃあ少し頼みたい事があるんだ。今日俺のうちにきてくれないか?」
「別にいいぜ」
「じゃあ頼むな。言っとくが俺の成績は学年三位だぞ」
ちなみに大樹は下から六番目だったと思う。俺の眼から見てだが真面目にやれば十位は狙えると思うんだけど……まぁ今からじゃあれだけど。
「おーい席につけー」
何時の間にか先生が入ってきていた。めんどくさい一日の始まりだ。
つまらない。何か楽しい事はないのか。ってそんなことより授業授業。
昼休みになるまで大樹はずっと眠るつもりなのか既に熟睡している。暇つぶしに大樹の観察をしてみた。
一時間後寝てる。
二時間後寝てる。
三時間後寝ている。
四時間後寝返りを打った。
昼休み起床。終わった瞬間にだ。
「よーし今日も一日良く勉強した!」
「どこがだ!!」
「うおおお!! びっくりした。和人飯食おうぜ飯」
「…………」
という事で昼休み。俺は弁当があるからいいのだが大樹はパンを何時も買っている。しかも珍妙なもの。
「ふんふんふんふふん♪」
謎な歌を歌いながら上機嫌で帰ってくる大樹はいつのまにかパンがどっさりある。というかいついったんだ?
「おお見ろよ和人! 今日はこいつを買ったんだZE!」
「なになに……バターしょうゆケチャプ梅干みりんマヨネーズプロッコリーミラクル味?」
「うまそうだろー? 数との分も買ってあるぜ!」
そういって俺にパンを渡す。いや、いらないんだけど……………。ていうかミラクル味ってなんだよ?
「んじゃ食べようぜ!!」
「あっ……えーとその、なんだ………いただきます」
「いただきまーす!!」
豪快にかぶりつく大樹。すこーしだけ食べる俺。
「うっ……えーとすまん」
「いや……いいよ」
後で捨てとくから。さてと弁当でも食うかな。
大樹は普通のパンも買ってたし平気だろ。
「いいよなー最近和人弁当ばっかでよー彼女できた? もしかして天野?」
「いや、凛じゃないよ。つーか彼女いない。年齢=彼女いない暦」
ではこの弁当は自分で作ったか? 違う違う。ぽちとタマだ。交代で毎朝作ってくれているっぽい。今日はタマだ。妙に豪華なのはタマ。ぽちはどっちかって言うと家庭的な感じ。タマは純粋に美味い。ぽちは工夫を凝らしてるからこっちも美味い。ん? どっがうまいかって? どっちらも良い勝負なので判定は引き分け。
「そーいえば天野いねぇな。いつもなら来るのに。ていうか天野弁当作んないよな」
「そういえば今日は見てないな。どうしたんだろ? 凛は料理下手だからね」
キーんコーンカーンコーン
おっと昼休みが終わった。午後は大樹に見習って寝て過ごすかな。





       

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