Neetel Inside 文芸新都
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ぽちタマ
ぶらり二人散歩

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「……きて……おにい………ちゃ…おき……」
俺は誰かの声と揺さぶれる事で目を覚ました。
「うー誰だよ」
「私ですよ兄さん。さぁ下に降りてきてください朝食が冷めてしまいます」
俺は約三分後に現状を把握した。
そういえば、今度から梓が起こすんだったな。
皆を待たせるのも悪いからささっと着替えて一階に降りた。
「おはようなのですご主人様」
「おはようございます飼い主様」
「おはよー和人!」
「和ー寂しかったよ」
「兄さんおはよう御座います」
いっせいに? いや次々と挨拶がとんでくる。
「ああおはよう」
皆元気だなー。と思う。
俺の隣は梓とタマか。
俺の位置は決定しているが俺の隣は規則性がない。昨日はぽちとタマだった。一昨日はタマと凛。あれ? タマ多いな。
まぁそんなことより飯飯。
「いただきまーす」
うむ。今日の料理担当は梓か。
既に一口目で誰が作ったものか分かる俺って凄いと思うんだ。
料理人でも目指すかなぁ。
「あ、兄さんご飯粒がお口に付いていますよ」
「えっ? ああ」
梓に言われたので取ろうとするとタマがひょいっと俺についていたご飯粒を取って食べた。
「なっ………タマさん!?」
「私はもったいないから食べただけよ」
うーん? いいのかそれで。世間一般はこんな感じなのだろうか。それとも俺たちだけがおかしいのか。
多分前者だろう。というかそう信じたい。
「ごちそうさま」
梓とタマが何か言い争っているので速めに切り上げておく。
凛は何故かは分からないがムーを包丁を持って追いかけている。
「ご主人様! 今日はお休みですよね?」
「ん? 学校今日は休みだけど」
「それじゃあ一緒に遊びましょうです!」
最近忙しくてぽちに構ってられなかったからたまには良いかなと思うので特別にOKだ。
「いいよ」
「ほ、本当ですか!? やったのです!」
「そんなに喜ばなくてもいいだろう。何時でも遊んでやるよ。暇ならな」 
「うっしゃーなのです!」
さて、何してやるか。大樹がやってたようにボール投げればいいのかな。
「それじゃぁ着替えてなのです。お散歩に行きましょう」
散歩とは。全く持って犬だな。
いや、犬だったんだっけ?

     

俺は着替えてぽちと一緒に家を出た。
凛はまだムーを追いかけていて、タマと梓はそろそろ喧嘩が始りそうだったが気にしない気にしない。
「おーいまだかぁ?」
「もうちょと待ってくださいなのです!」
しばらくするとぽちはこっちにやって来た。
見るとぽちはなんか物凄くふりふりな黒のドレス(?)を着ていた。
なんというか、ゴスロリだ。
しかし妙に似合っているので惚けてしまった。
「ど、どうしたのですか?」
「いや、似合ってるなぁと」
「ほんとですか!? 嬉しいのです!」
しかし、その姿で外を歩くのは如何かと。
「そうだ、忘れてたのです。もうちょとだけ待っててなのです」
そう言ってまた部屋に戻って行ってしまった。
時間がかかりそうなので耳を澄ましてみる。
「死ねぇ!!」
凛だな。そんな言葉使うなよ。
「あっはははは!」
ムーか。笑っていないで謝れ。
「猫の分際で!」
梓か。そんなこと言っちゃ駄目だろ。 
「黙りなさい貴方如き存在が相応しいとでもお思いか?」
タマだな。なんかよくわからんが迫力あるな。
「ただいまなのです」
タマが持ってきたのは財布だった。
全く、財布を忘れちゃ駄目だろう。
ん? 財布?
「なんでぽちが財布持ってるんだ?」
「なんか、拾ったのです。大体えーと。30万はあるのです」
「30万!?」
そんな大金を拾ったというのか。
というか警察に届けるのが普通なんだけどきっと犬だから分からなかったんだろう。
犬だからね。
「さささ、早く行きましょうなのです!」
「そうだな」
取りあえず凛とかに巻き込まれないうちに家を出よう。
危ないからな。主に凛がね。

     

近所をぶらぶら歩いてるだけなのだがぽちはずっとニコニコしている。
何がそんなに嬉しいのだろうか。
やはり犬は散歩がすきなのか。ならたまには散歩に連れてってやるかな。
「綺麗なのです」
背後からぽちの声が聞こえたので振り向くとしゃがんでいた。
なんだ? トイレか?
「お前はもう人間なんだからこんなとこでトイレしちゃ駄目だぞ」
「違いますです! このお花が綺麗だから見てただけです!」
「どれどれ」
道端にぽつんと咲いてる一輪の花。
コスモスですね。
「コスモスだな。うん」
「コスモス……良い名なのです」
道端にしゃがんで一輪のコスモスを見つめる男とゴスロリ少女。
へ、変態だー! って言われても言い逃れできない気がする。
「また見に来ましょうなのです」
満足した様子で立ち上がるぽち。
よかったよかった。今は周りに人がいないけどいつ通りかかるか分からないからなぁ。
「わんわん」
「ちょ、長老!」
突然ぽちが叫んだ。やめなさい近所迷惑でしょ。
あ、こっち見た。さっき誰かこっち見た。
ところで長老ッテ誰?
「わんわん」
どう見ても年老いた犬です。本当にありがとうございました。
「ご主人様、この方はわんわん協会の会長なのです。わんこには畏敬と尊敬の念をこめて長老とお呼びしているのです」
「わんわん」
如何にもという風に鳴くこの犬はどう見てもただの犬にしか見えない。
ていうかワンワン協会って何してるんだ一体。
不思議だ。世の中には不思議な事がいっぱいあるんだなぁ。みとぅお。
なんだかぽちは長老と話し込んでいるようなのでぼっーとつったてることになった俺。
第三者の目で見たらどうみても変な人にしか見えないよね。
暇なので何か面白いものはないかと見渡してみたらいた。
巫女服姿の人とメガネかけてる人。
それと妙にテンションの高い女性にメガネの人に抱きついてはなれない女性。
耳を澄まして聞いてみる。大丈夫だ。いける頑張れ俺。
THE・盗み聞き。
「さーくんあっそぼーよ!」
「駄目だ。俺はこれから教師の試験だ」
「理ーなんでメガネなの?」
「それは勉強のし過ぎでメガネになっただけだ。というか帰れ」
「はぁはぁ理さんの匂い理さんの匂い」
若干ぽちっぽいのいるな。
というかあの巫女服の人凄いな。さっきから壁歩いてるよ壁。
どうやったら壁歩けるようになるんだ。俺の目かおかしいのだろうか。
いや、絶対歩いてるよ。壁に垂直だよ。
「兄さーん!」
なんか、イケメンな人がメガネの人に抱きついてる。
兄弟なのか。あのメガネの人モテモテだなぁ。いいなぁ、俺もモテてぇ。
「ご主人様帰りましょうなのです!」
何時の間にか話は終わっていたようだ。
長老はどこにも見当たらない……どこ行った長老?
「帰りは別のルートで行くか」
「わーいなのです!」
大通りにはなるべく出ない道を選ぼう。

     

「ただいまー」
「なのですぅー」
ドアを開けた瞬間俺は戦慄した。
開けなかったほうが良かった。
なぜなら、俺の目の前には包丁を持った凛が鬼の形相で立っているからだ。
般若とかそんなの比じゃない。本当の鬼だ。
「どこに行ってたのかな? かな?」
「いいか、落ち着け。COOLになれ、な」
駄目元で説得に試みるが……。
「変なの。和人ってば何に怯えてるの?」
お前だよ! とは言いたいが言わない。
殺されてしまうからだ。
「凛、俺たちは散歩に行ってただけで……」
「嘘だっ!!」
こええええええ!!
後ずさりして尻餅を着く俺。
包丁を天高く振り上げる凛。
「危ないからそれを下ろせ!」
「うん。もちろん振り下ろすよ♪」
違うってーの!
振り下ろすんじゃなくて下ろす!
「う、うわぁああ!!」
玄関から飛び出す、逃げろ、じゃないと殺られる!
「どこに行くのかな和人。待ってよ、そっかぁ鬼ごっこかぁ……それじゃあ十秒数えるね」
ちょ、超怖ぇええええ!!
死にたくない死にたくない死にたくないぃぃ!
「あはははははははははは!!」
「うわぁあああ!!」
結局鬼ごっこは朝まで続いた。
その頃ぽちは……。
「抜き足差し足忍び足……」
「あら、どこに行くのかしらぽち」
「た、タマ……ちょと部屋に戻るだけです」
「ふーん……まぁどうでもいいけど飼い主様とどこに行ってたのかしら?」
「そ、そんなにどすの利いた声はやめて欲しいのです……怖いのです!」
「あら、何半泣きになってるの? 私はただ質問してるだけじゃない。ねぇぽち」
「あわわわわわわわわ」
結局尋問も朝まで続いた。

       

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