Neetel Inside 文芸新都
表紙

文藝SS漫画化企画(原作用まとめページ)
1話余分にアップした物語

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ボロボロに。そして潰されていく。彼は楽しいのだろうか?つらいのだろうか?
ただ、折れた骨を露出したまま畳み込まれていく。
無機物の彼に精神的な答えを期待しても無駄だと分かっているが、それでも問いたい。
なにせ、僕には彼が感情のあるように思えるのだ。彼、もといアンフィカーは。
この車が経年廃車にならなければ齢五〇になったであろう、空色の外車だ。
いや、元々は濃い青色だったのかもしれない。記憶が不確かなのは子供の頃、叔父がこの車を所有していたからだ。
叔父はとてもこの車が気に入っていたらしく、帰省するとよくこの車を洗車していた。
そんな重宝していた車を叔父は惜しみもなく僕に譲渡してくれた。それも免許取立ての若葉ドライバーの僕に。
内心ではきっと手放したくない気持ちでいっぱいだったんだろう。
だが、逆に祖父は車を手放さなければならない状況だった。
年のせいか足が弱くなり車に乗ることもままならなくなっていた。
このまま持ち腐れても仕方ないと思い、僕を見込んで、僕がこの車を大事にしてくれると思って譲渡してくれたんだと思う。
しかし祖父の思惑とは裏腹に僕は祖父に答えられなかった。
現に廃車となって僕の目の前で横たわっている青い車体。
そしてもう一つ罪なことがある。それは僕が祖父を裏切ったということだ。
もう祖父はもうこの世にいない。先月の頭に老衰で死んでいったからだ。
最後まで車のことを気にしていたらしく、「車を頼むぞ」という遺言にもつかない言葉を残して逝った。
祖父が死んでからは枷が外れたようなそんな開放された気分になれた。
何故なら祖父に譲り受けてからは帰省のたびにこの車で帰省しなければいけなかったからだ。
そうしなければ祖父は「この車を売ってしまったのでは。潰してしまったのでは。」と疑心暗鬼し、
よく電話をかけてきては実家に帰るように催促するからである。
また、帰省と言えば真夏を通り越したがそれでも暑い盆か大寒過ぎた身も凍る正月で、
この車はオープンカーなために苦労を虐げられたのだ。
勿論、この車の年式は60年代のものなので車を密室にすることも出来ないし、クーラーすらない状態。
とどめは雨を防ぐこともできず、僕の家に車庫が無いため車庫を借りなければ・・と散財であり、面倒くさいことこの上なかった。
しかし、もう祖父は生きてはいない。枷がはずれた今こそが最善と思えたのだ。
それが、僕の心を締め付けた。祖父の思いを尊重すべきか、自分の利か。

今に至るまで悩みに悩んだ。が、結局利に流されたのが結論だ。
そして、自分の罪悪感を反芻し続けた。意味も無い繰り返される思いを。

長々と思いにふけっていると容易に潰された青い鉄くずはもう、どこかへ消えてしまった。

今まで忌まわしく纏わりついた重荷も簡単に消え去るもんだ。
深々とそう思うと、残滓とも言える掌底にあるカールエール社のエンブレムを跡がつくほど握りつけた。


     

ボロボロに。そして潰されていく。彼は楽しいのだろうか?つらいのだろうか?
ただ、折れた骨を露出したまま畳み込まれていく。
無機物の彼に精神的な答えを期待しても無駄だと分かっているが、それでも問いたい。
なにせ、僕には彼が感情のあるように思えるのだ。彼、もといアンフィカーは。
この車が経年廃車にならなければ齢五〇になったであろう、空色の外車だ。
いや、元々は濃い青色だったのかもしれない。記憶が不確かなのは子供の頃、叔父がこの車を所有していたからだ。
叔父はとてもこの車が気に入っていたらしく、帰省するとよくこの車を洗車していた。
そんな重宝していた車を叔父は惜しみもなく僕に譲渡してくれた。それも免許取立ての若葉ドライバーの僕に。
内心ではきっと手放したくない気持ちでいっぱいだったんだろう。
だが、逆に祖父は車を手放さなければならない状況だった。
年のせいか足が弱くなり車に乗ることもままならなくなっていた。
このまま持ち腐れても仕方ないと思い、僕を見込んで、僕がこの車を大事にしてくれると思って譲渡してくれたんだと思う。
しかし祖父の思惑とは裏腹に僕は祖父に答えられなかった。
現に廃車となって僕の目の前で横たわっている青い車体。
そしてもう一つ罪なことがある。それは僕が祖父を裏切ったということだ。
もう祖父はもうこの世にいない。先月の頭に老衰で死んでいったからだ。
最後まで車のことを気にしていたらしく、「車を頼むぞ」という遺言にもつかない言葉を残して逝った。
祖父が死んでからは枷が外れたようなそんな開放された気分になれた。
何故なら祖父に譲り受けてからは帰省のたびにこの車で帰省しなければいけなかったからだ。
そうしなければ祖父は「この車を売ってしまったのでは。潰してしまったのでは。」と疑心暗鬼し、
よく電話をかけてきては実家に帰るように催促するからである。
また、帰省と言えば真夏を通り越したがそれでも暑い盆か大寒過ぎた身も凍る正月で、
この車はオープンカーなために苦労を虐げられたのだ。
勿論、この車の年式は60年代のものなので車を密室にすることも出来ないし、クーラーすらない状態。
とどめは雨を防ぐこともできず、僕の家に車庫が無いため車庫を借りなければ・・と散財であり、面倒くさいことこの上なかった。
しかし、もう祖父は生きてはいない。枷がはずれた今こそが最善と思えたのだ。
それが、僕の心を締め付けた。祖父の思いを尊重すべきか、自分の利か。

今に至るまで悩みに悩んだ。が、結局利に流されたのが結論だ。
そして、自分の罪悪感を反芻し続けた。意味も無い繰り返される思いを。

長々と思いにふけっていると容易に潰された青い鉄くずはもう、どこかへ消えてしまった。

今まで忌まわしく纏わりついた重荷も簡単に消え去るもんだ。
深々とそう思うと、残滓とも言える掌底にあるカールエール社のエンブレムを跡がつくほど握りつけた。


       

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