「もらいっ!」
「あっ!?」
食べようとした瞬間また飴を奪われた。
「さー君のモノは私のもの。私のものも私のもの」
「なにいきなりいってんののお前。ていうか食うな」
「あむあむ何で?」
なんていうか。こういうところを弟たちに見られてたらやばいな。
瞬間背筋に寒気が。
なんだこの寒気は。まさか。いや嘘だろ……。
首を百八十度曲げているんじゃないかと思うくらい曲げて後ろを見る。
ばれないように。そっと。
い、いた。
聖と弟がじっとこっちを見てる。屋台の影から。
「どうしたの?」
「ははっはははは。とりあえず、急いで走らず逃げよう」
「何言ってるのっ?!」
俺は美希の手を取って無理やり人ごみの中に入る。
「ちょとまってよさーくん!」
ええい。気にするな俺。
奴らを撒くためだ。聖もあの晩から少々評価が変わった。
強引に引っ張って美希を連れて行く。
かわらに出たところで一休みした。
「ふぅ。撒いた……かな?」
「な、なにが? ていうかいきなり引っ張ってびっくりしたじゃない!」
「ん? あぁ……ごめん」
美希は顔を真っ赤にしてしきりに握った手を触っている。
怒ってるのか? ていうか強く握りすぎて痛かったか?
とりあえず俺がすべき事は。
「ええーとごめん」
「えっ? 何が?」
何がっておま。さっき怒ってたじゃないか。
とりあえず撒けた見たいだし、ここで花火でも見るか。
「ここで花火見ようよ。そろそろ時間だし」
「んーさーくんがそういうならいよ」
とりあえず元に戻ったみたいなのでいいや。
俺は原っぱに仰向けに寝転がった。
「あ、あのさ………ずっと聞きたかった事があったんだけど………」
「んぁ……なに?」
俺の隣に女の子座りする美希。
なんだ。なんかおかしな雰囲気だぞ。