Neetel Inside 文芸新都
表紙

世界の終末
悪夢

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世界は、色を失っていた。



それは、白と黒が織り成すモノクロの世界。

その中で俺だけが色付いていて、ひどく違和感を感じる。

このモノクロの景色の方が異常だというのに、何故か自分の方が間違っている気さえしてくる。


俺は、そんな世界に一人立ちすくんでいた。


まだ発狂せずにいられたのは、今いる場所が自分のよく知っている場所だったからだろうか。

ここは、見渡す限りじゃ俺が通っている学園の教室だった。

たったそれだけのことだけど、この非現実的な光景を目の前にして、一体何が起こったのかを
把握しようと思考をめぐらせることができるくらいは余裕があった。

しかし、考えた所で答えが出るわけもなく、俺はとりあえず廊下に出る。



それが、運の尽きだった。


廊下に出た俺の先に、そいつはいた。


まさに、人外の化け物。

その名が一番相応しいように思える。

人間のような体つきをしてはいるものの、その体の大きさはプロの格闘家のそれよりも
遥かに上回って見える。

さらに、全身は闇のように黒く、背中からはコウモリの翼のようなものが生えている。
両手からは鋭利な刃物のような爪が生え揃っており、鋭い目は真っ赤に染まっていた。

さながら、物語などに出てくるガーゴイルといった感じだった。

そんなことを考えていると、やつは俺の存在に気付き、こちらに振り返る。

ただ見られただけだというのに、圧倒的な恐怖があり、思わず失禁しそうになる。

本能的な恐怖に駆り立てられ、俺はその場から離れようとするが――――


すでに遅かった。


いつの間にか、やつの姿が目の前にある。

その右手はすでに振り上げられていて、俺は成す術もなく、あの刃物のような爪によって
左肩からの右の脇腹にかけて切り裂かれる。

その力があまりに強力だったためだろうか、肉が千切れる厭な音とともに、俺の体は宙を舞う。

止め処なくあふれ出てくる、赤黒い液体。

地面に身体が打ち付けられるが、そんな痛みは大して気にならず、虚ろな瞳が宙を彷徨う。

もう、指一本でさえも動かすことができない。

体から急速に熱が引いていき、視界がかすんでくる。

意識が混濁し、体の感覚がほとんどなくなり、ただの肉塊に変わろうとしているこの体が
自分のものなのかすら分からなくなってくる。

もう、駄目だ。

モノクロの世界。化け物。

なぜこんな世界に俺だけがいて、急にわけの分からない化け物が出てきて、襲われて……。

そんなことはもうどうでもいい。

早く、楽になりたい。


俺はすべてを諦め、静かに目を閉じた。

『神代……隼人……』

不意に幼い少年のような声が頭に響く。

『ごめんね……。でも、これから起こることに、決して目を背けないで』

俺の名前……どうして?

『君は、なくてはならない存在だから』

誰……? 
俺以外にも誰かがいたのか?
だったら助けてくれても良かったじゃないか……。
俺は急にその誰かのことが恨めしく思った。

『探すんだ』

……探す? 一体何を?

『諦めないで。君ならできるよ。だって君は……』

誰なの……? 君は一体誰なんだ?

『僕は――――』

しかし体は限界のようで、その返事を聞く前に、俺の意識は深い闇底へと落ちてしまった。

       

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