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ナンパの哲人
哲人

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 哲人(てつひと)は考えた、世の中には三種類の人間がいる。一つ目は肌のみで考える人、二つ目は知識のみで考える人、最後は頭だけで考える人だ。彼は最初の肌のみで考える人を最大の知者だと思った。彼らは現代の思想を何ら学ぶことなしにその肌のみでそれらを体得することができるのだった。そして知識のみで考える人は全ての事象を自分の知識に当てはめようとする人間である。それ故に柔軟性を持っているが盲目的になりがちである。三つめの人間は全てを自分の頭の中でだけ考えてそれ以外のことを信じようとしない人物のことであり、知識の上のことを体得するまでに一番時間がかかる人間でもある。哲人はまさにこの種類の人間だった。

 以上のことを思いたったのは彼が高校三年の頃だった。周りの人間は受験勉強や就職活動に忙しかった。彼がその頃一緒につるんでいたのは地元で就職をする人間や、大手の自動車工場の学校へ行ってそのままその工場へ就職する計画を立てているような生徒達だった。彼らは元気があって、よく遊んでいた。進学を目指す生徒たちとは対照的に見えた。

 彼は最初就職を志向する人間たちを単なる無知だと考えた。彼らの就職に対する希望は突発的なものだと思い込んでいた。しかしそれらは偏見に過ぎないことを知った。彼らの話を聞く限りでは彼らは親戚や先輩の話を聞いた後に熟考し、そして今の進路を決めたとのことだった。そして彼はむしろ即断によって働きやすいのは進学を希望するような人間にほどありがちだと考えた。

 彼は英単語の丸暗記などを行ってる生徒を見つめては、果してそれの意味するところは何なのだろうかと考えた。少なくともそれらは彼自身が生きる上には必要のないものだと思った。彼が思うに就職をする生徒にはそういった勉強は必要ない、そして進学をする生徒には必要なのだ。彼らは知識の上で世の中の物事を整理し、そして知識によって世の中は大したものではないことを知る必要があったのだ

 しかし彼は就職をすることは全く考えていなかった。彼は自分の考えがまだ十分に至らないことを承知していたし、何よりも就職をするような知者にはまだなれないだろうと思った。彼は世の中の多くのことについて納得がいかなかった。個人を崇拝していながらも個人を捨てなければならない社会のシステムに対して懐疑的であったし、何よりもそういった精神分裂的な思考に至ることができなかった。
 しかし彼は周りの友人たちによって幸運にもその手段を得ることができた。つまりは精神分裂的な行動によってそういった思考をものにすることができるのだということが解った。彼は今まで自分の思考を遮断するさまざまな快楽は愚であると決めつけていたが、これによってその思考を反転させることを決意した。現実に即して言うと彼はナンパ男になることに決めたのだった。

       

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