「じゃ、行きましょうか」
「え? どこへ」
「部屋よ、アリスの部屋にベッドは一つだったでしょう?」
「あ、そっか……」
アリスの部屋から数十メイル離れたところにその部屋はあった。
ドアはよく油が挿してあり、音もなく重そうな扉は開いた。
それと同時に部屋の明かりがともり、ベッドや机、絨毯から壁の模様がほどよく照らし出される。
「それじゃ、おやすみなさい」
スーシィは入り口に立ってユウトの後ろで言った。
「あれ、スーシィはどこで寝るんだ?」
「聞いていたでしょう? 私はアリスと同じ、相部屋よ。それとも一緒に寝たいのかしら」
スーシィは艶笑してユウトに近づく。紫色の瞳がゆらゆらと揺れている。
「別にそれでも構わないんだけれどね。やらなきゃならないこともあるし……」
「うん、それでも俺は一応アリスも心配だから……」
「いいから休みなさい。ユウトが心配しなくても私はもう……」
気がつくとユウトは閉ざされた扉の前に立っていた。
「あれ……?」
軽く眠っていたようにぼやけた頭で、ユウトは暗がりの中、手探りでベッドを見つけて潜った。
「何か忘れてる気がするけど……」
微睡みに落ちていきながら、ユウトは何も思い出せないまま眠りについた。