その後スーシィを起こしに行ったユウトだったが、
慌てた様子もなく悠々と授業に出たのは4時間目からの授業だった。
「今日は皆さんに新しい同志を紹介します」
声たかだかに叫ぶ女性は黄色いステッキに紺の三角帽子とマントを身につけ、
教壇の上から教室の入り口を指した。
「ミス・スーシィ」
魔法によって教室の入り口がさっと開くと、スーシィが端正に入ってきた。
拍手はまばらだったが、生徒の関心はスーシィに釘付けだった。
「わけあって全名を明かせないようですが、皆さん仲良くして差し上げて下さい」
「マジョリア先生」
生徒の一人がユウトの横から手を挙げた。
「なんですか、ジスタール」
「彼女への質問はいいですか」
すると、マジョリアと呼ばれたメイジは教壇に両手をついて双眸(そうぼう)で生徒たちを睨むようにみた。
「安易なものはいっさい禁じます。
お友達になりたいと思った方だけ語りかけることを許します。
興味本位、または彼女の内面、事情を探るような行為は一切許しません。
そして彼女から話しかけられたら答えることを義務とします。これは、メイジたるものの心得です」
では、彼女から一言というマジョリアの言葉によってスーシィは教壇の中央から一歩前へ出た。
「ご紹介にあずかりました、スーシィです。
先ほど、先生が仰いましたように私に対する接し方はそのようにお願いいたします。
ですが、決してがっかりしないでほしいです。
なぜなら私は皆さんと、誇り高きメイジとして、一人の人間としてお友達になりたいからです。
皆さんが、私をお友達として迎えてくれるのなら、私はどんな質問にも答える努力を惜しみません。
どうかそのことをお忘れなきようお願いすると共に、
力を抜いてマナの赴くままに接して頂ければ嬉しく思います。どうぞよろしくお願いします」
歓声と拍手に包まれる教室。
その中で舌打ちをするアリスがユウトの隣にいた。
「ふん、何よ。良い感じの挨拶しちゃって。女王さまじゃないんだから」
アリスが毒づく。
「素晴らしく美しい挨拶でした。ミス・スーシィ。
そう、互いの義務とは認め合うことなのです。
それがなければ、いかに必要な義務とはいえ、正当な関係にはならないでしょう。
答える義務とは言い返せば認める義務が互いにあるということです」
先生はここに感極まったと言わんばかりに諸手を挙げて力説しているが、生徒たちは逆に醒めていった。