Neetel Inside 文芸新都
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 しばらくしてユウトが浴場から上がると、替えの服がないことに気づいた。
「あ、あれ……スーシィ?」

 やはり信用ならないと思うのと同時に自分の置かれた状況が非常に緊迫したものであることを悟った。

 鐘が響き渡る。

 このままでは生徒達が教室から出てきてしまうと思ったユウトは入り口から頭だけを出して廊下の様子を伺った。
 そこにちょこんといたのは先ほど使い魔専用の食堂で見かけた少女であった。

「あ、君はさっきの……ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

 普通は使い魔が他のメイジの命令を聞くことはないだろうが、この人型の使い魔は言葉が分かるのか、頷いた。
「えっと、服を持ってきてほしいんだ。男ものの。わかる?」

 落ち着いた緑の双眸がユウトの顔をじっと見つめて頷いた。
 ユウトはそれからしばらくして、少女が持ってきた謎の服を手に入れて事なきを得た。
 汚れた衣服を持って少女にお礼を言おうとしたところで、後ろから声があった。

「リース! こんなところにいたのかっ」

 現れたのは金髪頭の少年。マントもズボンも煌びやかな装飾が飾られている。
 リースと呼ばれた少女はその金髪頭の少年のところへ行った。
 よく見るとまるで年の離れた兄妹のように見えなくもない。しかし、着ているものは月とスッポンほど差があた。

 さしずめ、召使いと王子のようだ。
「ん? なんだそっちの貧相な男は」
「あ、もしかして、この使い魔のメイジなのか。実は俺、さっき助けて貰ったんだ」

「おまえは……」
「え?」
 いくぞとリースに呼びかけると金髪頭の少年は踵を返した。

       

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