Neetel Inside 文芸新都
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「まほうしん『ぴ』よ。 『魔法』はマナを原動力としてその力を発揮するけれど、
『魔法神秘』はマナを一定量しか使わない、マナの流れそのものが魔法として完成した状態のことよ」
「なんだかよくわかんないけど、凄いってことだな」
「全っ然、凄くなんかないわ。下手したらあの子、アリスは死んでしまう……」
「え!」
 ユウトは今や虹色に輝く魔法陣の半円を凝視した。
「Leye o navelia(剪定の眼)」
 空間に浮き上がった目玉のようなフィルターがスーシィとユウトの間に現れる。
「見なさいユウト。あの円の中心にアリスがいるでしょう」
 その目玉フィルターを通すと、アリスが膝をついて両肩を握っているのが見えた。
「なんか、震えてるみたいだけど」
「本来、魔法神秘なんてものは早々完全な状態で作られないってことよ。あれは確実にアリスのマナを抜き去って本来どうやっても使われない命の器のほうのマナを使い始めてる」
「なんでそんなことが? 薬のせいか?」
「それだけはあり得ないわ。あれはちゃんとした正規の秘薬ですもの。私自身が過去に使ったこともあるし、他にも服用した生徒は少なからずいたわ」
「生徒? でもそうだとしたら今のアリスの状態は一体何なんだ」
「全くわからないわけじゃない、あの魔法陣の多さ。あれは明らかに人為的な要因でしょうね」
 フラムはいつの間にか防戦する一方となっていた。アリスの魔法陣から飛ぶ光りの線がフラムの目の前で弾けて夜空を照らす。正規のスペルを持たないただの力技にフラム自身、効率の悪い戦いを強いられていた。
「まずいわね……」
「え?」
「フラムの体よ。このフィルターを通してみれば判るけど、何も唱えてないのに体の周囲にスペルが浮き出ているのよ」
 みるとフラムの体の周囲をスペルの残像が浮かんで、円を描くように現れていっている。
「大魔法を詠唱する気? あの白いふざけたマントにはしかけがあったようね。ユウト、このままだとアリスは死ぬわ」
 それは困る! とは即答できなかった。ユウトにとってアリスは昨日今日の仲でしかない。
 守るも何も命を賭けられるかどうかは別問題だ。

       

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