Neetel Inside 文芸新都
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「なんで気絶した私を放っておいて園長と戦ったのか判らないけど、
 あんなのと戦うなんて……まあ、その時に負った傷だっていうんならレビテーションの許可も頷けるわね」
 アリスはそれでも禁書図書室の鍵を諦めきれないとぼやいた。

「さて、そろそろ授業に出ないと……ってユウトは?」
「さ? そんなことよりアリス、ちゃんと脚は治ったんだから私の正体は今後とも――」

「わかってるわよ。言われなくたって、これでもメイジの端くれなんだからっ」
 廊下をゆく二人はふふと笑い合う。
 窓から差し込む陽の中、二人の距離は確実に一歩縮まったようだった。


 一方ユウトは学園長室にいた。
 というのも、半ば強制的に連れてこられたようなものだ。
「…………」

 そして会話の内容はユウトにとって、衝撃的であった。

「そ、それじゃあアリスは……」
「恐らく、長くはもたん」

 園長フラムはアリスの体から無尽蔵に出てきた魔法陣が、
 ユウトの使った薬によってアリスの体内へ戻っていくのを見て確信したという。

「このことはミス・スーシィも気づいておる。
 でなければあのように適切な秘薬をお主に渡す道理がない」
「一体いつ誰にあんな魔法を……何の目的で」

 スーシィはアリスの魔法陣が人為的なものだと言っていた。
 しかし、それがまさかアリスの命を蝕むものなどと、ユウトは容易に受け入れ難かった。

「思えば、入学当時からどこか出自も性格も他の子たちとは違っておったわ。何かあるとは思ったのじゃが……」
 フラムは遠い目で窓の外を眺めた。

「あと、どれくらいなんでしょうか。アリスが……死んでしまうのは」
「死ぬと決まったわけではない。じゃが、確実にあれは命を減らしめるものじゃ……」

「何か手はないんでしょうか」
 ユウトの問いにフラムは小さく首を振る。
「あれはあの術を作ったものにしか解き方はわからんじゃろう。
 まさに闇の魔法としか言いようがない。そして、ミス・レジスタル、彼女の命があと何年続くのかも……」

 ユウトは園長室を後にした。
 重い気分のまま、アリスの部屋へと向かう。

       

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