Neetel Inside 文芸新都
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(出来ることは……何もないのか……)
 誰もいなくなったアリスの部屋は静かに甘い匂いがした。

「鍵くらい閉めていけよ……」

 ユウトは授業に出る気分にもなれなくて、学園内をうろつくことにした。
 使い魔が授業に出る道理など、何処にもないが、

 ユウト自身それが楽しいことであったし、皆にもてはやされるのは悪い心地ではなかった。
 けれど、今の気分はそんなものではなかった。

 気がつくとユウトは食堂にいた。
 すると、なぜか一匹、もとい一人がちょこんとテーブルに向かって座っていた。
「リース?」
 確か金髪の男が彼女をそう呼んでいた。ユウトは不思議に思って、彼女へ近づいた。

 ――――。
「ミス・レジスタル!」
「はいっ」

「授業に集中していますか?」
「……はい」

 スーシィの横でアリスは二度目の叱咤を受けた。
「……」
 鐘が丁度鳴り響き、先生は苦い顔をして授業の終わりを告げた。

「おい、アリス」
「――ぇ?」
 呼びかけたのは金髪の男、カインだった。アリスはすぐに隙のない表情になる。

「あによ」
「お前、今日はあの使い魔はどうした」
「知らない。どっかぶらぶらしてるんじゃない」
「管理が行き届いてないな。それでもメイジか?」

「私はメイジでも、あんたと違ってメイジであることを鼻にかけるような下賤とは違うわ」
 その瞬間に二人の間に何かが走った。スーシィもこのやりとりを見るのは何度目かだが、今回は少し違った。
「お前の脚も治ったことだ。一つ、使い魔同士の勝負といかないか」

「お断りよ。私は忙しいの」
 アリスは教科書を持って立ち上がった。

       

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