Neetel Inside 文芸新都
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「あれだけ自分の使い魔を豪語してたお前が、決闘を挑まれて逃げるつもりか?」
「逃げる……?」

 アリスの雰囲気が変わる。

「そうだ、お前はいつもそうだ。逃げてる。友達からも勉強からも、あまつさえ七年前から――」
 ぺちんという音が教室に響き渡った。

「逃げてない。なんならここで始めたっていいのよ」
「ははっ……そうだ、それでこそアリスだ。決闘は明日の夜十の刻。いいな? 使い魔専用食堂の裏だ」

 そういうとカインはジャラジャラとマントを音たてて教室を出ていった。
「意外とモテるのね。アリス」
「あなたほどじゃないわ。ああいう変なのしか寄ってこないのよ」

「でも、彼、あなたをどうにかしたくて仕方ない感じだったわ。愛されてるのね」
「気持ち悪いこと言わないで。愛なんて今の私には不要よ」
 スーシィは言葉を続けずにくすりと笑って小さく同意した。


 その頃、リースとユウトは森の中で食料を集めていた。
 覆い茂った草むらや岩場をくぐり抜けながら、木の実や小動物を獲っていく。

「リース、そのキノコは食べられないよ」
 こっちの世界にもキノコなんてものがあるのは初めて知った時ユウトも驚きだったが、
 食べられるキノコはどこを探しても数種類しかないのがこちらの世界だった。
 それをリースは面白がって生えてるものを手当たり次第に引っこ抜くものだからユウトはその度に食べられないと言わなければならなかった。

「食う」
「いや、無理。あるいは食えても調子がおかしくなっちゃうから」
 リースは好奇心が旺盛だった。物覚えも早く、ユウトが教えた木の実は既に全て記憶してしまっている。

「どこの世界の使い魔なんだろうなあ」
 自分と同じ境遇で、この世界を受け入れているのではないかとリースを見て考える。
「リース」
 依然としてキノコに興味があるリースを呼び止めると、リースは紫色の髪を抑えて振り向いた。

「そろそろ終わりにしよう。日も暮れてきたし」
「うん」

       

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