ざわざわという人の声はまさにこれだけの広い空間に沢山の人間が集まればこそのものだ。
ユウトはアリスを見失わないようについていくので精一杯だった。
「この辺でいいわね」
アリスが止まった先は食堂のおおよそ真ん中らへんであろうか、
しかし隣には得体の知れない大きさのパワードウルフがいた。
『――グオォォオオ』
「ち、ちょ、まじで?」
「あにがよ」
「こんなでっけえ使い魔も一緒に食事すんの?」
「当たり前でしょ。何のための雨の日(ヴォワ・マンジェ)だと思ってるの?」
「ヴォ、ヴォワマン――?」
「ヴォワマンジェ」「なにそれ」
「はぁ――、使い魔は別に知らなくていいのよ」
アリスがそう言ったとき、低い音で空間を揺らすものがあった。
鐘がなると絨毯に一本の光りの線が入る。
あたりは静まり、線のそばからは使い魔もメイジも皆後ろへ下がるように離れた。
「あんた、その線の上にいたら怪我するわよ」
「え?」
慌ててユウトが身を引くと黄金線は垂直に伸びて横へ増幅した。
「な、なんだこれ――」
「ちょっと黙って」
アリスがユウトを引っ張ると光りの部分が徐々に輝きを失い白い石のテーブルとなった。
『レビテーション!』
メイジたちは一斉に魔法を詠唱した。
「レビテーション」
遅れてアリスも詠唱する。ユウトの体はアリスと同時に空中へ浮いた。
「な、なんで浮いた?」
「上下を見ればわかるでしょ」
ユウトは恐る恐る足下をみると子供のメイジたちが残っていた。
一方、上の方では大人のメイジたちが集っている。
その先に見えたのは白い服とマントの老人、フラムだ。
「皆の者! 今宵まで、マナの恩恵に預かり、生命の営みと共にあることを心して楽しみ給え」
フラムがそう言ったとき、天井が天窓のように解放された。