Neetel Inside 文芸新都
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「えええ!」
 天井が解放されるということは雨水がもろに食堂へ降り注ぐというわけだ。
 しかし、驚いたことに次の瞬間天地は逆さになった。

 ――ギュン。
 替わって天井からゆっくりと降りてきたのはいくつもの白いテーブルだった。
 質素なものが除々に下へ流れていき、豪華なものへと替わって、
 ユウトの目の前で止まった頃には見るも華々しいほどの料理が並んだテーブルになった。
 そうして、地面から上ってくる光りの露となった雨が幻想的なムードを作り出す。

「す、すげえ……」
「この空間は全て学園長一人のマナで維持されてるそうよ。
 魔法は人の心を豊かにし、人を満たすものでなくてはならないという教えが下で徹底的にすり込まれるわ」

 ユウトは下の方を見ると確かに何やら大声で復唱していた。
 同時に何やら可哀想な気がしてきた。
「上に行けばいくほど豪華な食事で、下に行けば行くほど質素な食事になるの。
 例えばここにあるパンは一番したにあるものと比べると生地の厚さも味も雲泥の差よ」

 そういってアリスはどこか寂しげにパンをほおばった。
「なんでそんなことを教えてくれるんだ……?」
「は? 勘違いしないでよ。私もここまで来るのにはそういう見るにも耐えない生活を送ってきたの。
 なのに突然来たあんたが今の私と同じ――とにかく、あんたみてるとなんか腹が立ってきたのよ」

 アリスはもうユウトを尻目にもしないで食事を始めた。
「……そ、それで、俺は食べてもいいのかな」
「勝手にすればっ」

 ユウトはテーブルと一緒に浮いた長いすへ腰掛けた。
 フルーツからパン、スープ、肉類まで選り取り見取り、豪華絢爛だ。
「うん、うまい」
 スープはユウトの作ったトンスープとはまた違ったよさがあった。
 真心が籠もっているというのか、悪く言えば絶対にまずいとは言わせない作りになっていた。

「リースも来てるのかなあ」
 そう思いあたりを見回すユウトだったが、周りにはそれらしき姿はない。
 それにかわって目に飛び込んできた光景はメイジたちが使い魔にご飯を食べさせているところだった。
 見るとほとんどのメイジが自分より先に使い魔に食べさせている。

「……」
 隣のパワードウルフなんかはまさにそれだ。

       

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