Neetel Inside 文芸新都
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 ぐらっ。
ユウトの頭で血の巡りが悪くなった途端、その音は頭の中で響いた。
よろりとよろけて見せたユウトに容赦なく土塊の敵が迫る。

「ユウト――!」
 剣の軌道は躱したものの、敵の突進は躱せずユウトは吹き飛ばされ、地面の水たまりが飛沫をあげる。

 一瞬感覚がクリアになったが、すぐにまた黒い視界と無音の世界が広がる。
「がはっ」

 まずいっ! ユウトは頭の中で叫んだ。
 手足の感覚すら危うくなってきた。これでは微妙な力加減ができず、攻撃も防御もできなくなる。

 ユウトは立ち上がって双眸を懲らす。もはや、数メイル先までしか視界がないのだ。
 ユウトはリースの打撃を何度か受けた後、また土の剣士によって打撃を受ける。

「カイン! 卑怯よ! これのどこが決闘なのよ。こんな一方的なのは戦いでもなんでもないわ!」
「なら、降参してお前の使い魔を俺に渡せ。
 お前はこんな使い魔を持っていてどうするってつもりなんだ?
 僕にはただあの時から逃げているようにしか見えない。
 そう、七年前だ。だからその現実を打ち砕く使い魔を召喚すると躍起になっていたのに、
 出てきたのはちょっと普通より強い人間の使い魔、僕は失望したよ。
 君がやつらから受けた『命を削られる魔法』を忘れるかのように人との繋がりを求めていたなんてね」

 …………。

「使い魔召還は主の求める姿形をしたものを呼び出す。
 だから学園では『召喚』ではなく『召還』と使う。
 心の内を呼び出す魔法。それがサモンサーヴァント。
 君の心の内には両親の亡き姿が焼き付いていないのか?
 両親の無念を、お前が生きているうちにやつらに返してやるんじゃないのか!」

 ……………………。

「いいか、他の誰でもないアリス、
 お前がやつらを倒さなくちゃダメなんだよっ。
 そのためになら僕は卑怯でも、何でも、君に後悔の念を忘れさせるワケにはいかないッ!」

 使い魔をよこせ。最後にカインはただそれだけを言って黙った。
 アリスは俯いたまま微動だにしない。

「(アリス……)」
 アリスの声が聞こえない、
 やはり自分でも知っていたんだとユウトは認識した。
 この戦いにもしユウトが負けたらアリスはどうなるのだろうか。

       

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