Neetel Inside 文芸新都
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 カインは得体の知れない何かを見つめる想いだった。
 その時、コントラクトから一度もその力を見せたことがなかったユウトのルーンが輝いた。

「な、なんだ」

 目映い光りが辺りを包むように広がる。
 浮き上がったリースの顔には涙が流れていた。

「はあ――」
 ユウトはその光にぼうっとした心地になって、剣を降ろした。

「今だ! リース、そいつを倒せ!」
 リースが息を呑んだ。その行動は使い魔が主の命令を聞く突発的なものだっただろう。
 リースは半ば考える余地もなく剣をユウトの腹に突き立てた。

「――っ!」
 しかし、剣がユウトの胸を貫くことはなかった。
 リースの握っていた剣は溶けるようにして融解した。

「ワルキューレ!」
 カインの呼び声によって、土塊の騎士がユウトへ愚直に突貫する。
 しかし、それすらもユウトは許した。

 ユウトに土塊が触れると、根元から身体の芯を震わせるようにして土塊は土へと返っていく。
「馬鹿な……なんだ、こんなのあり得ない……リース! まだだ、まだいけるだろう!」

 カインがリースに発破を掛けるが、リースは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。
「……くっ、うぅ――」

 ユウトが突然うめきを上げるように左手を持って膝をついた。
 どこから見ていたのか、スーシィが現れてアリスに駆け寄っていく。
「アリスっ! はやく、早くコントラクトの力を解きなさいっ、アリス!」

 アリスがはっとしたように我に返ると息をしてなかったのか、急にむせ込んだ。
「けほっ、けほ――」
 そのままアリスは気を失い、リースも緊張が解けたのか膝をついて意識を失った。
 何人もの先生がアリスへ駆けつけてくる。

 誰も騒ぐことはなく、どの先生もフラムの指示を受けて黙々と行動していた。
 そうか、みんな知っていたのか。などとユウトは頭の片隅で思った。

 カインは一人、先生に連れられて校舎へと戻って行った。

       

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