「ええ、大事なものよ」
シーナはそっとそれを握った。
「そーれ、リース。俺は三匹目の魚だぞ」
「私は五匹」
「……」
一方、ユウトとリースは森で食料確保していた。もはやそれはゲーム感覚に近い。
あの後、リースとカインは仲違いしたまま、
カインは自宅謹慎を命じられリースは学園に置いてけぼりにされた。
カインはアリスに負けたと思い込んでいるようだ。
「リース、コツを教えてくれよ」
そう言ってユウトがそばへ近づくとリースは困った顔をしてダメと一言いった。
「そんな……」
「違う、そうじゃなくて、私の髪は……から、あまり近づかない方がいい」
「なんだ、まだ気にしてるのか」
ユウトはリースに近づいて頭の匂いを嗅ぐようなしぐさをした。
「ぁ……」
「何ともないぞ。ほら、沢山釣れるコツを教えてくれよ」
「やだ……」
リースは首を振り、頬を染めてユウトから離れる。
「リースのその髪の効果って一度きりなんじゃないかな。俺にはもう効いてないよ」
「ほんと……?」
不安そうな顔でユウトを見つめる。ユウトは頭を掻いて手招きした。
リースが恐る恐る近づくとユウトはリースの腰をとって捕らえる。
「そらっ」
「あ……」
そのまま腕に抱えて元の位置へ座る。
「今日は魚料理だな。ほら、二人で釣ろう」
「う、うん」
ユウトが後ろから包み込むように釣り竿を持つ。傍から見れば、親子のよう。
ユウトの両腕に初めて人の温もりを感じたリースは小さな涙を流したかもしれない。
不思議な心地が流れ出て、二人は一刻ばかりを過ごした。