Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      


 そんなユウト達は何処吹く風で、休憩時間の教室ではシーナの話題で持ちきりとなっていた。
「え? ご実家はジャポルなんですか!」
「あそこの市民権は銀行に一生遊んで暮らせるほどの預金が必要なんじゃなかった?」
「すごい! それじゃ、シーナはお金持ちなのね!」
 シーナは人受けがよく、また大らかな性格で人気を博していた。

「一国のお姫様のようだわ」
 誰かがそういったとき、人垣に潰されていたアリスが机の端に押し出された。
「うぐっ――」
 尻餅をついて床に転がったアリスはスカートを叩いて席を離れた。
 五刻目の鐘が鳴ってアリスはようやく自分の席にもどることが出来た。
 スーシィはどこかで時間を潰していたらしく、しばらくしてから教室に姿を現す。

「ごめんなさい、皆さん悪気はないと思うんですけど」
 シーナはアリスとスーシィに申し訳なさそうに答える。
「別にっ」
「でも、これで私は注目の的から外れたわけだし、私としては願ったり叶ったりね」

 シーナが再び頭を下げて何かを言い終わる前に、アリスはぼんやりと空いた席を見た。
 ここ最近はユウトと一緒に授業を受けていない。カインと決闘をしてからリースの面倒はユウトが見ている。アリスは嫌だったのだが、カインが勝手にリースを置いていってしまったのだから仕方ない。
 そう割り切っているつもりだった、でも心細い。
「あによ……」
 アリスは小さく呟いた。


 五刻目が終わり、アリスとスーシィは早々に授業道具を纏める。
「それじゃ、ミス・シーナ。さようなら」
 クラスメイトたちがシーナを囲み出す中、二人はそう告げて机をたった。
「ええ、さようなら。またお話しを聞かせて下さい」
 ここにきて、シーナはアリスの横顔をどこかで見たことがあるような気がした。
「気のせい、かしら……」

 アリスは部屋に戻ると、ため息をついた。
 まさかとは思ったが、廊下に点々と続く泥の後はアリスの部屋の中へと通じていたのだ。
「ユウト、掃除しなさい!」

       

表紙
Tweet

Neetsha