すれ違う生徒たちの視線はどこかいつもより冷たかった。
ユウトは嫌な予感と共に、教室にはいる。
「来た、アリスだ」
みんなはアリスの姿を見るやいなや、アリスをあからさまに避けるようにして遠ざかった。
よくない噂が流れているに違いない。
昨日は廊下で言い合ったばかりなのだ。ユウトは確信する。
「……」
それをいち早く察したアリスはぎゅっと拳を握ると、一人平静を装って席へ着く。
クラスが居心地の悪いムードに包まれていく中、
それにじっと耐えるようにアリスとユウトは大人しくしていた。
扉を開ける音で、静寂を破ったのはスーシィだった。
ユウトは救われる思いでスーシィを見る。
しかし、その目はユウトをわずかに捉えるも、すぐに逸らされた。
スーシィは誰にも挨拶することなく、アリスの隣へゆっくりと座った。
「?」
ユウトは不思議に思って話しかける。
「スーシィ? おはよう、スーシィ」
スーシィは目をぱちくりと瞬かせる。
「あら、おはようユウト。調子はどう? 今朝はごめんなさいね、少し用事があったの」
良かった、いつものスーシィだ。いつものどっきりする今朝はいらないのだけれど。
「っ……」
アリスがユウトの袖を引っ張って睨む。
もう会話をするなということらしい。
ユウトは仕方なく前を向いた。
それからしばらくして、マジョリアが来るのとほぼ同時にシーナの姿が見えた。
「すみません、遅れました」
「いいのですよ、シーナ。ギリギリですが、間に合っていますから」
シーナは席に着こうとする。
「ユウト……」
まさか、空いていた席がユウトのモノだったとは思わなかったに違いない。
スーシィを挟んで向こう側にユウトが座っていた。
「や、やあシーナ」
「……おはっ――」
シーナは短く息を吐くと、スーシィの横へ座り前を見る。
ユウトは慌ててアリスへ振り返ると、アリスの顔はふいっと横を向いた。