Neetel Inside 文芸新都
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「それでは、授業を始めます」
 …………。

 一刻目が終わると、アリスは突然ユウトの腕を掴んで立ち上がった。
 吊られてユウトが体勢を崩しながら持ち上がる。

「おわっ」
 何事かとアリスを一瞥すると、何も言う気はなくなった。

「さっさといくわよ」
「あ、ああ……」
 とてつもなく怖い。
 ユウトはシーナとスーシィに助けを求める視線を送るが、無視される。

 アリスは教科書や羽ペンをぐしゃっと纏めると、出口へ向かって歩きだした。
 それをクラスメイトは冷ややかな視線で見送る。
 教室に残されたシーナとスーシィの二人はしばらく無言でいた。

「あんな調子じゃ、研究室にもユウトを呼びかねないわね」
「どうすればいいんでしょう
 ……このままじゃ、もう二度と話させてもらえないかも」

 涙ぐむシーナの手をスーシィが包んだ。
「大丈夫、ユウトをきっと取り戻せるわ」

 二人は教室を出て、奥まった廊下を進んでいく。
「あの、どこへ……」
「アリスも知らない、特別な研究室よ」

 窓のない行き止まりへ出たスーシィは、マントから杖を取り出してスペルを唱えた。
「oeo npodr 767」

 スーシィの足下から塗り変わるように壁の色が変わり、扉となった。
「凄い……」
 しかし、部屋の中に入った途端、異臭が鼻につく。

 思わず二人は鼻を押さえずにはいられなかった。
「独自に研究がしたいっていったらここを貰えたわ。
 余りがないのを承知で無理に頼んだけれど、いくらなんでもこれは酷いわね」

 スーシィとシーナはホコリとカビの臭いに加えて、何だか腐ったような臭い。
 そしてすぐ足下まであるガラクタなのか植物なのかわからない物の山に顔を引き攣らせた。

       

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