少女は慣れた手つきでユウトの鎧を脱がし始める。
後ろに回された細い腕はユウトの動きを封殺する。
少女の髪は蒼い花片のように艶めかしく、甘い匂いをさせてくる。
「し、シーナ、自分で脱げるからっ」
ユウトは思わず後ずさる。
「そうですか、じゃあ自分で脱いで下さい」
シーナと呼ばれた少女は意に介さずといった様子で答えるが、
何だか落ち着かないユウトである。
ユウトは小さく溜め息を吐くと、数十キルはあろう鎧を脱ぎ捨てた。
「(こういう鎧は嫌いだな。動きにくいといったら有りはしない)」
ユウトは一人胸の内で毒づく。
「汗はかいていないようですね。さ、これに着替えて下さい」
シーナが用意してきたのは旅服と革靴だった。
茶色い生地に皮を刺繍し、強化が施された丈夫な服だ。
そして簡単なズボン。
ユウトはその着慣れない服に袖を通すとシーナが言った。
「大変、お似合いですよ」
「そ、そうかあ?」
シーナはにっこり微笑むと、しなやかな手つきでユウトの襟を正した後、
上着に付いた埃をつまんでそれを見えないように捨てた。