Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      


「なんでこんなことに……」
 カインは草むらを歩きながらマントの泥を見える限りで、はたき落としている。
「定員オーバーだったんでしょう。
 よく見れば、あの程度の大きさの魔法陣だとせいぜい三、四人が限度。
 私達が二人、使い魔をいれて三人だから、残りはユウトたち四人」
「僕らはどこへ飛んだんだ?」
「さてね、多分ケルロスの丘だと思うわ、一応丘っぽいし。
 まあ、一歩違えばどうなっていたかわからないけれど」

「それって、かなり危険なんじゃないか」
「転送装置の事故は良く聞く話ね。でも――」
「あのエセ副会長め……」

 カインは杖を握りしめた。
「そういえば、あのスバルって男を知っているの?」
「え、ああ。あいつは学園一の問題児と名が高いんだ。
 上の学年じゃみんな知ってる。
 僕らは一年だからあんまり知らないけど、やることなすこと無茶苦茶ならしいぜ」
「へえ、じゃあ今回のことも無事に終わるってことはなさそうね」
 スーシィはあまり興味がないように素っ気なかった。

 カインはちょっと気に触って、もう少し話した。
「エルナって会長がいつも止めに入ってくれるおかげで事なきを得てるんだが、
 あいつも何が楽しいのか次から次へと問題起こしてるんだってさ」
「そうなの」
 もう少し取っつきやすい印象だったはずだとカインは首を捻ったが、
 スーシィにはどうでもいいことだった。

 さぐりさぐり草を掻き分けて進んでいくと、大きな石が積まれた穴が見えてきた。
 白い岩の上には薄茶色く引きずった汚れが所々についており、明らかに不穏な気配が漂っている。

「おい、あそこは絶対まずいって。明らかに巣窟じゃないか!」
「丁度良いわ。行きましょう」
「お、おいっ」
 止めることが出来ないまま、スーシィはカインの先へと行ってしまう。

「ん、リース? お前も行くのか?」
 リースは短剣を抜いて歩き出した。

「ふぅ……使い魔に先を越されるなんてな」
 カインは諦めて二人の後へ続くのであった。

       

表紙
Tweet

Neetsha