Neetel Inside 文芸新都
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 一方、洞窟に飛ばされた四人の姿は依然として闇の中にあった。

「スバル先輩でしたっけ、さっきの話し、嘘ですよね?」

 スバルはアリス達が歩き出してすぐに闇の中から吹き飛んできた。
 モンスターかと思ったアリスは咄嗟に火の魔法を使って、スバルの前髪を少し焼いてしまった。

「嘘ではない。
 どう考えても丘じゃないし、ここがケルロスの巣窟だったら良かったんだけど、
 それも怪しいものだ」

 どうやらここはクエストとは全く関係のない場所だという。

「それじゃ、どうしろっていうんですかっ?
 私達、帰れないじゃない」

「あ? ああ、その点については大丈夫だ。ポイントカードを持ってるかい?」
「ええ」
 アリスは手の内に金色のポイントカードを取り出した。
「それは帰還(リターン)の魔具でもあるんだ。
 学園内のどこかにランダムで帰ることができるすぐれものさ」

 スバルは焦げた前髪を掻き上げて、蒼白な面持ちをちらつかせて言い放った。
「じゃあ、すぐにもどって行き直すというのはどうですか?」
 シーナは思いつきで言ってみたが、スバルの険しい表情がそれを無理だと悟らせる。
「そうしたいのは山々なんだけどね。
 見てごらん、このポイントカードが次に転送できるのは……」

 ポイントカードの裏に24と緑の数字が点滅している。
「二十四刻後。つまり、丸一日は無理ってことなんだ……」
「ふ、冗談じゃないわよ。
 何が悲しくて丸一日こんな暗くてじめじめした洞窟にいなきゃならないの?」

「本当に悪かったと思ってるよ。
 でも、一番危険なのはあの金髪の子たちだ。
 ケルロスは群れで行動するから一歩間違えばただじゃ済まない。
 僕はそっちの方が心配でならないよ」

 スバルは神妙に言う。
 確かにスバルの言うことは一理ある。
 しかし、それを想像することは三人にはできなかった。

「カインはともかくスーシィは大丈夫ね」
「……ほう、やっぱりかい?」
「やっぱり?」
「――いや、何でもないんだ。何となく彼女は強そうな感じだったからね」
 それなら少しは安心だと言った。スバルの顔色も少しは良くなったと思える。
 アリスの杖先がその光りを揺らめかせながら辺りを照らす。

「本当にどこなんでしょう」
「もしかしたらケルロスの一匹くらいいないかしら。
 ねえ、先に行ってみましょう」
「丁度僕もそう思っていたところだよ」

 何故かスバルとアリスの意見が合致した。

「「ええっ」」
 ユウトとシーナの声が被る。
 そこは止めるところだろうと、二人は思う。

       

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