Neetel Inside 文芸新都
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 そして、それらのエレメンタルを取り込み続けたモンスターは、
 やがてそのエレメンタルが尽きると、メイジの持つマナと肉を食らう凶悪な魔物へと変化する。
 ユウトはこの手のモンスターと対峙して、何度も手をやいたものだった。
 見た目は全くアテにならない。

「パープル色は……多分四大要素以外だ。気を付けろ!」
 スバルはそう叫んだものの、かき消える。
 サンドワームたちが突如、牙のような皮膚を擦り合わせて、大きな雑音を生み出し始めたのだ。

 ギキギギィィイイイ――。
 黒板をガラスで引っ掻いたような甲高い音が何重にも重なってユウトたちへ襲いかかる。
 スペルジャム。魔法を使われたくないモンスターなどがメイジに対して精神阻害を行う行為だ。
 もっともこの手の音型はメイジと戦うためにモンスターが備えているものではなく、
 元は仲間への警戒音として備わっていたものが、進化したものだ。

「――ぁ――――ぃ」
 シーナが何か喋っているようだが、聞き取ることは出来ない。
 密室でのジャム効果は通常よりはるかに大きい。
 スバルやアリスと連携を取ることは困難を極めた。
 ギャ――。
 突然群れの一匹がシーナへ襲いかかる。

「はっ――」
 ユウトの剣が火花を散らして鳴る。
 四撃。それだけの数を一瞬に繰り出したにもかかわらず、
 全身が剣のような肉はいなすのが精一杯だった。

「――――」
 相変わらずシーナが何か喋るが、聞き耳を立てる余裕はどこにもない。
 たった一体でもいなすのが精一杯のユウト。
 一斉にこられたときにどうなるかは想像に難くない。
 くそっ――。

 そうユウトが思ったときだ。
 ぱっと光と影が一瞬のうちに起こる。
 アリスが火属性の攻撃を放った瞬間だった。
《こんな騒音で私が魔法を打てなくなると思ったら大間違いね》

       

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