Neetel Inside 文芸新都
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 地面でしきりにスペルジャムを起こしている一体に直撃したが、
 鱗のようにびっしりと全身を覆う牙がそれをいとも簡単にかき消した。
《反則だわ……》

 ジャッ――。
 同時に襲いかかるサンドワーム。
 アリスは悲鳴を上げたようだが、スバルがすかさず守護の壁を詠唱した。
「いや、盾――か?」

 光に弾かれたサンドワームは仲間を蹴散らしながら悶えている。
 狂った仲間を敵だと思った一体がそれに襲いかかり、共食いのような構図が生まれた。
「っ――」
 飛び散る肉片にシーナが息を呑んだ。アリスもそれは同じなようで、
 次にそうなるのは自分かもしれないという恐怖が襲いかかる。

 ユウトはその隙に刃こぼれしたツェレサーベルを鞘に収め熟考する。
「何故襲ってこない……」
 一度に襲ってくれば多勢に無勢、何の問題もないはずだ。

 しかし、何故わざわざスペルジャムまで起こして長期戦へ持ち込むのか。
 ユウトには不思議でならなかった。
 部屋はまだ明るい。もし、この部屋の明かりが消えてしまったら……?

 ユウトははっとする。サンドワームは元々地中に住む生き物だ。
 エレメンタルのような力を放つものは別として、何で獲物を認識しているのか。
 それは、多様にあるように思えたが、自ら音を発している以上は音以外の何かだと容易に想像できる。

「振動……か?」
 彼らは長い地中生活で暗闇でしか目が利かない。
 地面の中は普段音もない。
 とすると、出てきたはいいが、彼らは敵の場所(振動や目)がわからない故にこのような行動に出たのだろう。

 ユウトはそれを結論付けるには少し早すぎるかとも思えたが、
 どちらにしろこのままでは後がない。
 ツェレサーベルを鞘に収めると、ユウトはシーナを連れて地面を強く蹴った。

 飛んだ直後、ユウトの振動を読み取ったサンドワームたちが群がり、
 その後ろから前へと振動のある方へとサンドワームたちが飛び込んでいった。
「ユウト!」
 敵は混乱した状態となり、スペルジャムを発する数が減ったおかげで話しをできる。
「時間がない、弱点と思われることだけ言う。奴らにもっと強い光を与えるしかない」
 剣で攻撃した時よりもスバルの光りに直撃した時の方がずっと苦しそうに悶えていた。
 

       

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