ユウトはサンドワームが光りに苦手であるのではと思い至ったのだ。
ユウトの仮説にスバルも頷く。
「この部屋の倍、いや、三倍の光り増幅でいいかい?
それならアリス君の光りがもう一つあればできる」
「シーナ、光りの魔法は出来る?」
首を振るシーナ。それもそのはず、魔法学園へ入ったのはつい数日前なのだ。
「じゃあ、ダブルワンドしかないね」
スバルが片手に杖をもう一つ取り出した。
「ダブルワンドっ? そんなの無理よ」
「授業で習ってなかった?」
「完璧にできた生徒はいなかったわっ」
ダブルワンド、その名の通り杖を両手に持ち、魔法を詠唱することである。
難易度は高く、高速詠唱とは違う特殊な技術と熟練を要する。
実戦に不向きなため、一種の曲芸とも言える。
「あの、私がこれから習って使います……光りの魔法」
「できるの?」
シーナはつい三日前に編入してきたばかりだというのに、
発見されて新しい属性『光り』を操れるとは思い難い。
アリスは鋭い眼光をなげかけた。
「出来ます。今から教えて下さい」
「――」アリスはシーナの決意の目に驚かされる。
「いいわ、じゃあスペルから教えるわよ――」
ユウトは他に方法がないか考えてみた。
エレメンタルを取り込んだこのモンスターが果たしてどの程度強いのか、見当もつかない。
いつも通り、弱点を突く以外にこの場を凌げる有効手は思いつかなかった。
「hyeli isscula!」
ぼんっという音が響いた。
「マナを練りすぎよ! 早く止めてっ」
一瞬成功したようにも見えたが、シーナはその後すぐに肩で息を吐いた。
「要領は今のであってるはずよ。この魔法はスペル配列に特殊性がない分、
マナの調整が他の魔法よりずっと繊細なの」
つまり、万人に扱えるが芯を作る部分は個人によって変化するということだ。
「(アリスさんは、こんな微妙なマナをコントロールしているの……?)」