「君は忘れてしまったのかもしれないがね。もともと君のあるべき場所はここではないのだ」
「あるべき場所?」
「そうだ。そこが君の元いるべき本来の場所。主であるメイジの命(みこと)を守り、共に闘う。
それが使い魔である本来の君の姿だろう」
男はジャポルという街を目指すことと、たくさんの貨幣をユウトに渡し、
それだけを告げるとす―と廊下の角へ消えていった。
凄いお金だった。
ユウトは実感が沸かず、今までの感謝の言葉も忘れてしまったことに気がついた。
足下には一万ゴールドと同価値の紙幣が束になっていくつもあって両腕には収まらなかった。
「きっと、国の任務で得た報酬ですよ! ユウト」
そういえば、一度も任務(クエスト)の報酬などは受け取ったことがなかったとユウトは過去を振り返る。
あの老人が監視役と指南役を兼任していたので恐らくは彼が受け取った際に貯めておいたものだろうか。
――不思議なじいちゃんだったな。
ユウトはこれまでの五年間を想起しながら荷物を担いだ。
部屋を出ようとして、ふと気がつく。
「(シーナにはもう会えないってことか?)」