Neetel Inside 文芸新都
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 部屋に人がいないときは、外への近道となる。
 この部屋を借りた時に見つけた便利なカラクリだった。

 ――ガチャ。

「あ、スーシィさん」
 中から出てきたのはシーナだった。

「あら、もう終わったの?」
「ええ、今日はあまりマナも残っていなくて……」
「大丈夫よ、かなり早いペースで溜まっていると思うわ」
 ちょっと見せてもらうといってスーシィはその部屋へと入る。

 綺麗に片付いた部屋には様々な薬瓶が並んでいた。
 その一角、特に大きな瓶には人一人がすっぽりと収まるほどのガラス張りに青白い液体がなみなみと詰まっている。

「うん、上等だわ。
 後はこのままマナを蓄積させてそれに見合う形の魔法陣を完成させて、
 最後にユウトのパルス(一部)ね」

 そう言うスーシィの態度は清々しいものだった。
「アリスさん、許してくれるかな――」
「何言ってるの、そのアリスの使い魔を奪うのが目的でしょ」

 スーシィはそういうと、マントの中から薬瓶を取りだしてその中身を青白い液体へと入れた。
 黒い繊維のようなものが、こぽりと溶けてなくなった。

「ごめんなさい、私の方は取れませんでした」
「いいのよ、元々ユウトに接触できるほどチャンスもないわけだし」

 シーナはダンジョンの中で、ユウトのパルスを探していた。
 しかし地面に落ちたものではなく、
 スーシィのように直接ユウトから取ったものの方が好ましいらしい。

「これで本当にユウトを召喚できるのでしょうか……」
「大丈夫、あなたのマナならドラゴンだって呼ぶことができる」

 使い魔召還具と書かれたそれは、スーシィが独自に開発した使い魔を呼び出す装置だった。
 そこにはシーナがありったけにマナを蓄積させている。
 その為に青白い発光液が出来上がっているのだ。

「それじゃ、ついでに講義もやりましょうか」
 シーナが頷くと、スーシィは黒板を机の上に置いた。
「使い魔の二化成から三化成要素に起因する召喚については教えた通りよ」

       

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