Neetel Inside 文芸新都
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「お元気で……」

 見るとそこには、小さな宝石を瞳に溜めたシーナがいた。
 確かにシーナがユウトの後をついてくる道理は全くない。

 ここに置いていってもあの黒服の老人が後の面倒を見てくれる。


「一緒に来る?」

 しかし、気づけばユウトはそんなことを口走っていて、
 置いていくという選択肢は初めからなかった。

 こっちの世界にきてからというもの家族も友人もいなかったユウトにとって、
 シーナは家族のようなものだ。
 貨幣も充分にある。

 もしかしたら旅先で記憶を取り戻すかもしれない。

「いいのですか?」
「こっちにいてもシーナは別に戦わないだろ?
 それにシーナが暮らすならもう少し良い場所があると思うんだ」

 何となく口から出た言葉だったが、
 言ってみてからユウトは少し恥ずかしくなって目をそらす。

 シーナは嬉しそうに顔を綻ばせて笑うと、潤んだ声で「ありがとう」と言い、
 そそくさと部屋に駆け戻るとその姿はすぐに返ってきた。

       

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