Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      


 ユウトがすかさず反応するが、これが返って墓穴を掘った。
 シーナはがたりと椅子をならして立ち上がる。
「出来ますっ、やらせてもらいます!」
 クラスがわっと沸いた瞬間だった。
「お、おい」
 スーシィはノートに複雑な計算式を書いていたので、クラスの怒濤のような声で我に返った。
「……ん、どうかしたの? ちょっと、シーナ?」

 アリスからユウトを奪う前にユウトをがっかりさせることはあってはならない。
 コントラクトを断られれば、契約はできない。
 シーナはそんなことを思いながら握り拳を作ったのだった。
「それじゃ、裏庭にでも行きましょうか」
「あれ、ちょっとシーナ、今日の研究は――」
 スーシィの声も空しく、クラスは一丸となって裏庭に向かった。


 裏庭ではシーナとセイラ、ユウトを囲んでクラスメイトたちが円状に集まる。
「ダブルワンド……ですか」
「そうよ、アリスより先に出来たっていうらしいじゃない。私に見せてよ」
「私、今はこれ一本しか持ってないです」

「なっ、嘘だったの? 出来るって言うのは」
「だから、あれはアリスのせいだって」
 ユウトはさっきから自分のことに耳を貸さないセイラをイライラとした気持ちで見ていた。

「こら、使い魔! アリスはどこよ」
「俺はユウトだ。アリスならここに来る途中でどっかに行ったよ」
 ざわざわとクラスメイトたちが騒ぐ。どうせ嘘だったんだと口々に言っていた。

「逃げたのね……はぁ、心配して損したわ。やっぱり所詮はアリスね」
 シーナとユウトを残して全員が帰ろうとしたとき、声が上がる。
「……待ってください」
 シーナは杖を片手に言った。
 ユウトを前に自分の言ったことを撤回することは出来ない。
 それに、アリスのことを悪くいう、目の前の少女にもシーナはなんとなく嫌な気分がした。

「アリスさんは決してあなたが思っているようなメイジではありません」

       

表紙
Tweet

Neetsha