「――……la!」
ぱきんというおかしな音と共に不発回数が増えていくシーナ。
初めから無理だったのだとユウトは思う。
シーナの顔色も徐々に悪くなっている。
「ユウト……私のことは良いですから、先に――」
首を横に振って答えるユウト。
シーナにはもう時間の感覚がなく、十分おきにこんなことを言っている。
「――悔しい……」
ユウトはこんなシーナを初めてみたと思う。
日はとうに暮れ、月明かりの下でシーナとユウトだけがいる。
「……」
途中でシーナは手洗いに行ったりしたものの、
すれ違う生徒にまで心配されるような疲労状態だった。
「シーナ、そろそろ休まないと」
「いいえ、ユウトこそ……」
こんなやりとりももう何回もしている。
「――……la!」
ぽんと光る球体は両方の杖に籠もることはない。
ユウトはそんな中、こつこつと石畳の上を歩く音が、近づいてくるのを感じていた。
「あ」
月明かりの影から小さな声がした。そこで明かりを受けた髪が金色に漂う。
その姿がアリスだとわかると、ユウトは聞いた。
「なにしてるんだ?」
無神経な物言いかとも思い直したが、それも仕方のないことだろう。
「それはこっちのセリフよ。もう消灯時間も近いのに――」
アリスは近づいて来ると、シーナがダブルワンドを構えているのを見て目を丸くする。
「は、ダブルワンド? 何のために」
「俺にもよくわからない」
「はあ、何よそれ」
アリスはしばし考えた後、シーナのやり込みように見入ったのか口を閉ざした。
「……――la!」
「どうしてついて来なかったんだ?」
ユウトは気になることを聞いた。アリスがもともとの原因なのは確かだ。
それを逃げるように消えたのは腑に落ちなかった。