Neetel Inside 文芸新都
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 それに賛同したかのようにもう一人のメイジが立ち上がる。
「そうです。現に過去に何度も二年での進級試験で死亡、瀕死という生徒は出ていた。
 メイジとして国に仕えるならば、己の実力を見極め、力量にあった選択を行うのは当然のことですぞ」
「……しかし、彼女たちのポイントは現時点で異例のゼロ以下。
 多少危険でも100ポイントともなれば飛びつくのは当然で、そこに酌量の余地があって然るべきですぞっ」

 協議は平行線となり、アリスたちを即刻救援すべきという意見と、原因の究明に留めておくべきだという二論に分かれた。
「よいじゃろう、ではまず原因の明解に努めよ。ゆめゆめ首尾を怠るではないぞ」
 老人フラムの声で一同はいきよく返事をした。

 …………。
 風の吹き荒れる絶壁。一行はマナの続く限り切り立った壁を登り続けていた。
「そろそろ限界だよ、僕は」
 ランスはそう言うが、この辺にはまだ休めそうな場所はない。

「あそこなら休めそうよっ」
 アリスが指さす先には突起があった。
「崖と平行しながらゆっくりと近づこう」
 ユウトはそういってわずかな凹凸を頼りに体を横へずらしていく。

「しかしあんたってば本当に身軽なのね。フライの速度に追いつけるほど登るのが速いなんて信じられないわ」
「俺の元いた世界じゃこうはいかないよ」
 ユウトの身体能力はここで鍛えられたものもあるが、それ以上にこの世界の常識より遙か上にあった。
 限度はあるが、ある程度の力技なら出来ないことはない。

「はぁ、はぁ」
 息を切らしてランスが断崖の出っ張りへと降りる。それに続いてアリスやシーナも降りた。
 ユウトが着くとシーナがフライを掛けてくれる。

「ランス、あんた前から思ってたけど、だらしがないわね」
「冗談はよしてくれ……はぁ、僕はこの使い魔を持ちながらフライを使ってるんだ」
 単身でのぼれば何てことはないと言いたげなランス。
「ユウトは魔法なんて使わずに登ったわよ」

       

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