Neetel Inside 文芸新都
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「使い魔と比べるなよ……」
 ひゅおっと強い風が吹く。

「うわっ――」
 自身のフライを解除までしていたのか、ランスは飛ばされそうになった。
 それをユウトが何とか掴み抑えると、ランスは震えていることに気がつく。
 アリスやシーナの服も軽くなびく。

「段々フライで防げる風でもなくなってきたわね」
「ユウト、やっぱりこの先はユウトの分もフライを使います」
 だめだとユウトは制止した。

「相手はハルバトだ、登りきった後に魔法を連発できるくらいのマナが残っていなきゃ勝てない」
 実際、アリスとシーナのマナは普通のメイジよりずっと多い。
 特にアリスが内に秘めるマナの大きさは先の事件でも明白であったように、底を見ない。

 あれが全て体内マナだとしたら、大気の精霊マナを利用する通常魔法はほぼ無尽蔵に行使できるだろう。
 本人はそんな資質には気がついていないようだが……。

 ここに来て全く疲れを見せていない二人とは対照的にランスはもう疲労困憊といった様子だ。
 流石にこれ以上は無理と踏んだのか、ランスの口から重くるしく言葉が紡がれた。

「僕を置いて先に行ってくれ……」
「ようやくその気になったようね」
 アリスが口を尖らせて言う。

「アリス……そんな言い方はないだろ」
「いつも私を見下しているからよ」
 ランスはさっきの風で、ぐうの音もでないほどに恐怖していた。
「ああ、悪かった。君はみんなが言うよりずっと強かなヤツだ」
 アリスも急にランスが素直になったのを見て悪く思ったのか、口を閉ざす。

「このままここで大丈夫ですか? モンスターとか……」
 シーナはランスを気遣っていた。
「さすがにそれくらいは自分でなんとかするよ」
 ランスはそう言うも、その消え入りそうな声は頼りなく、。
「本当にいいんだな?」
 ユウトはランスに男としてのプライドか、命かという問いを投げかけた。
「ああ……」
「じゃあ行こうか、二人とも」

       

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