Neetel Inside 文芸新都
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『Flables!(真球の火)』
 今度はアリスから光りが飛ぶ。
 エレメンタルで強化された火は本来なら林檎ほどの大きさしかなさない魔法も三十セントはある炎の塊へと変化する。

 だが――、炎はハルバトの首に当たると吸い込まれるように消えた。
『ありがたい……お前のマナを理解した』
「えっ?」

【でも、こういうのって意外とリスキーなのよ】
 スーシィの声が頭の中で木霊した。
 エレメンタルを通しただけで、そのエレメンタルを仲介役としてマナの性質を理解されてしまう?
 一つの予感めいた悪夢が駆け巡る。

 炎はハルバトに直撃したものの無傷、さらに背中の傷も癒えだしていた。
 ハルバトはゆっくりと体をアリスの方へと向けた。
 アリスはその事態を飲み込めないまま、呆然と立ちすくんでいる。
 いや、誰一人として魔法によって動けないのだ。

『チャームで動けなくなるとは、まだまだお前たちは子供なのだな』
 アリスの周囲がハルバトのマナによって歪む。
 突如、アリスの背中からむわっと濃度の高い気体が浮き上がった。
 それは吸い上げられるようにハルバトの鼻腔へ取り込まれた。

 がくりと片膝を折るアリス。とてつもない疲労感が全身を駆け巡る。
 それが己のマナを抜き取られたものなのだと理解する。
「は、反則よ……こんなの……」
「アリス! 止まるな!」
「アリスさんっ――」

 ごうっと鳴り響いたと同時に巨大な尾の鉄槌がアリスを襲った。
 既に開いた距離が返って単体攻撃を許すこととなる。
 チャームが解け、シーナがアリスに飛びついた。
 爆発にも似た粉砕が起こる。
 地面は縦に揺れ、ハルバトの尾の先は床をめくり上げていった。

「っくそ……」
 間一髪でユウトは二人を遠くへ突き飛ばしたものの、
 ユウトの右肩は尾の攻撃を掠め、おかしな形状になってしまった。
 紅い空に投げ出されたユウトは半回転し、二人とは大きく離れたところへ着地する。

『愚かな人間だ。なぜ弱い者を庇う』
「さぁな、お前の方が詳しいんじゃないのか」
『――……フハハ。愚かな――』

       

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