Neetel Inside 文芸新都
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 ハルバトは追い打ちを掛けるように躊躇うことなく再び二人の頭上に尾を振り上げた。
「させるか!」
 ユウトはハルバトへ跳躍する。
 肉迫した瞬間にハルバトは半回転。
 二人を攻撃すると見せかけて、ユウトへ襲いくるのが見えた。
 それはハルバトの罠であったが、ユウトは腰の捻りだけでその攻撃を紙一重で回避、左手に持ち替えていた剣で突く。
 ぶしゅりと血飛沫が上がり、ハルバトの眼球に剣が刺さった。

『グ゛ウ゛ウ゛ウゥゥゥゥ――バカな……なんだその動きはァ――貴様人間ではないなッ。ググ……』
 眼球を狙った一撃が見事にきまった瞬間その断末魔が響く。
 あの脳まで届く深い一撃を受けてはハルバトといえど、時間の問題だろう。
「やったか……?」
『……』
 頭角のように眼から突き出た剣に腕を伸ばし、その強靱な腕でそれを掴んだ。

『グォオオオオ――――』
 ハルバトはそのままずぶずぶと剣を引き抜くと崖の下へと放る。
 放物線を描いて崖下に消える剣と同時に、赤い空が徐々に晴れていく。
 幻影だった泉や木々も消え、そこにあったのはただただ転がる無数の白骨たち。
「――っ」
 シーナはその光景に息を呑む。アリスはスペアの杖を取り出して眉を寄せた。

『ふはははは、どうだ私が殺した人間たちの数だ。
 そして貴様は私に二度も攻撃を与えた数少ない上質な肉!
  その骨までしゃぶり尽くしてくれるっ!』

 ハルバトは潰れた眼窩から目玉を垂れ下げて、血潮をまき散らしながらユウトへ振り返る。
 ユウトに動く体力はあまり残っていない。
 徐々に砕かれた右肩が激痛と共に腫れてゆく。

「何故倒れない……」
『……ゆくぞ』
 その翼がぶわりと一仰ぎしただけでユウトの目前に巨体が降り立つ。
 だらりと垂れ下がった右腕と武器のない状態では、ユウトは当然この鋼の巨体相手に防戦一方となってしまった。
 迫り来るのは爪と翼を駆使した連携攻撃。頭上を掠める突風に肩が悲鳴を上げ、痛みで倒れそうになる。

「Melva!(水流)」
 ユウトを手助けするためにシーナが無心にハルバトの背中に魔法を飛ばす。

       

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