Neetel Inside 文芸新都
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「玄関に……っ」
 その時ユウトのルーンが黒い色で光った。
 ルーンを通してアリスの強い記憶が流れ込んでくる。ユウトは初めてのことに戸惑いながらも、その力を甘受するしかなかった。

 アリスは階段を降りていた。
 その背丈から眺める暗闇の景色は酷く広く、不安にさせるものがあったが、目の前には自分と同じくらいの男の子がいる。

 一人ではない、大丈夫。その安心感にユウト(アリス)はほっと胸をなで下ろした。
 階段を降りると、アリスの前にいた少年は「なんだあれ」と呟いた。

 アリスはそこに積み上がったモノを最初はゴミだと思った。
 ああ、ゴミが沢山あるからこんなに臭いのだと。しかし、地面に汁まで垂らしてしまっては、掃除が大変だ。

 アリスは母か父にこのことを告げるために振り返る。
 しかし、振り返ったところで後ろから悲鳴があがった。
 びくりとしたアリスは少年の方へ振り返る。少年は四つん這いになって唸っていた。

「ほう、不幸な子たちだね」
 男。見知らぬ男がアリスの横から現れた。この男からは何故か母の香りがする。

「……あ、あによぅあんた……」
 一瞬の安心感の後、一瞬の危機感がアリスにそれだけを言わせた。
 こんな夜更けにしかも明かり一つ無い場で出遭った見知らぬ男。招かれざる客人であることは幼いアリスにも理解できる。


「……っ」

 恐怖で泣き叫ぶことも出来ない。圧倒的なマナの外圧がアリスに呼吸の仕方を忘れさせる。

「ほう、素質があるようだな。我がマナに屈しないとは……しかし、生憎と私は飼育が苦手だ」

 アリスは息が詰まりそうになっていると、奥からまた新しい影が歩いてきた。またも見知らぬ人間だった。
 それは人間というには酷く不確かで、歪な形をしていて、この世のものとは見えない姿だ。

【ソムニア、モウ愉しンダだロウ。カエルゾ】
「少し待って下さいよ。こいつに唾を付けておきますんで」

【アソビ過ギダ、目的モオワッタ。ソレニモウ、イイダケ犯シタダロウ】
「現実とは、何をしても儚い夢のようなものだ。遊びなどという高尚なものではない」

 男は手にした扇のようなワンドで一言スペルを唱える。
「や、やだ、来ないで!」
 アリスは足元すらよく見えない状態でゴミの上を越えようと駆け出す。

 雷鳴と共にアリスの瞳にはっきりと●●が映った。
 そこでアリスの意識は急速に遠のいていった。


       

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