Neetel Inside 文芸新都
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「今日は和え物にしますね」

 和え物はシーナに昔リクエストしたもので、野菜や魚を使った料理ということになっている。
 食材は元の世界と似ても似つかないものばかりだが、
 雰囲気がなんとなく元の世界と似ているのでユウトにとっては好物だった。

 テーブルには光沢のある大理石(?)を使っていて、
 やはり落ち着かない感じではあるものの、
 普通の教室ほどの広さで各テーブルに流しや火元が着いているのが特徴的といえる。

 シーナは保管庫に食材を調達しに行き、その間にユウトはまな板や包丁を用意した。
 どこの世界でもこの道具は変わらないらしい。

「ユウト、水を火にかけて下さい」
「はいよ」
 魔法を使わなくても調理が出来るようにエレメンタルによって火が発生するこの仕組みは何度見ても飽きない。

 ユウトは火元に設置された円盤に近づき、その台の横についたノズルを捻る。
 すると円盤の中でエレメンタルが弾けるように動き出し、上部から小火が出た。
「鍋に水を……」
 
 シーナは慣れた手つきで野菜を刻んでいく。
 周りの生徒達はまるで長年連れ添った夫婦のような突然のコンビに訝しげな視線を送っていた。
 ユウトたちの隣のテーブルで料理を作る三年のカップルは言った。

「何だよあれ……恋人同士か?」
「それにしては年季が全く違うような……」
「わ、私の方が料理上手でしょ? ねえ?」
 シーナの後のテーブルではよだれを垂らす彼氏が蹴り飛ばされる。

 そう、ここは使い魔の食事場として使われることは滅多にない。
 大半が女による男に料理ができるところを見せてやろうという修羅場なのだ。

 そんなことはいざ知らず、ユウトはせっせと料理に勤しむシーナの前掛けを見てどこか温かい気持ちが沸いてくるのを感じていた。
「手が止まってますよ、ユウト」
「あ、ああ」

 じゃがいもだかにんじんだかわからない野菜を剥いていくその奇妙な感覚にももう慣れた。
 味はじゃがいもだからこいつはじゃがいもなのだ。

 こうして二人で作った料理はおいしくないはずがなかった。
「後はこれを振りかけて……はい、完成です」
 色とりどりの野菜にぎょろっとした目の魚はかつてユウトを苛んだが、今ではコイツを見ると腹が鳴る。
「頂きます」
「いただきます」
 向かい合って食事をする二人。
 シーナもユウトも談笑しながら食事をする。
 ユウトはここにきてかつてない心の安らぎを得ていた。

 

       

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