Neetel Inside 文芸新都
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4の使い魔たち
ミス・ラグランジェ

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「ごめんなさい」
 そんな声が上がったのは二人で階段を上っている時だった。
「私、本当はユウトに何か言えるような立場じゃないのに……」
「何言ってるんだ?」

 突然しおらしくなるシーナにユウトは不安な気持ちを隠せない。
「この学園に入れたのだって、ユウトやレミルのおかげなんです。
 普通の人としての人生を与えてくれた恩人でもあるのに……それを私、何を勘違いして……」

「レミル?」
 シーナの口からあっという言葉が漏れた。
 そう言えば、ユウトはシーナがどうしてこの学園に来たのか詳しい話しを聞いていない。
 お金だけ渡して、それさえあれば何でも出来るだろうと思っていたから聞くこともなかった。
 この学園に来たのもただ何かの偶然だと思っていた。

「俺の方こそごめん、勝手に押し付けて満足していたみたいだ。シーナの苦労も知らないで……」
「そ、そんな、実はあの後、レミルという治安部の方にお目に掛け頂いて……あ、ちゃんと女性の方ですよ」
 二人の辿々しい会話が階段の踊り場で繰り広げられる。
 ジャポルの六芒星団員の一人にシーナは拾われたようだった。
 当然だ。お金のおかげで住民票はあっても家が無ければ浮浪者同然である。
 そんなことすらユウトにはあの時点で考えてやれなかった自分を後悔した。

 しかし、経緯を説明したシーナはその魔法の才能も認められ、
 フラメィン学園に特別に使い魔がなくとも編入を許可されたのだという。
「そんなことが……」
 教室へ向かって歩き、シーナもユウトのことを責めることなど一度もない。
 話しが丁度終わると、スーシィが教室の入り口にいた。

「ああ、丁度良かったわ。二人とも」
 教室は何やら騒がしくなっており、周りの生徒は怒りに身を震わせていた。
「何があったんだ?」
「下級生の一人がセイラの使い魔を悪く言ったらしいわ」
 スーシィがさりげなくそんなことを言う。
 喧騒にまみれた一角を指さすスーシィの先には確かに混乱の渦があった。
 ユウトはそこで目を見開いた。明らかに浮いた存在でいるのは下級生であろうが、
 その姿は先ほどユウトにぶつかりそうになった少女のものだった。
 そこにはマジョリアの姿もあり、一瞬安心しかけた矢先、その口からはさらに信じられない言葉が紡がれた。
 大勢の生徒たちの間に割って入るマジョリアは声たかだかに宣言する。

「では、ここにミス・ラグランジェルとミス・ホオイェンの決闘を受諾いたします」
 決闘? 受諾? ユウトはこの間のカインとの決闘を思い出した。
「い、いいのかあれ」
 スーシィは首を縦に振って、
「元々下級生から上級生に決闘を申し込むことはアリになってるのよ」

       

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