Neetel Inside 文芸新都
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4の使い魔たち
対抗

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 一方、スーシィとシーナはユウトを召還する為の準備を完成させつつあった。
「はぁ、はぁ……」
 焦燥したシーナは杖を片手に息を上げている。
「もう完全にこの広大な敷地を焼け野原にするくらいのマナは溜まったわね」

 スーシィは落ち着いた声で絵空事のようなことを例える。
 懐から小瓶を取り出すと再びその中身を容器へと放った。
「毎回ユウトの髪の毛とかその……口では言えないようなものを一体どこから手に入れて来ているんですか……?」

 青い液体に黒い髪が溶け込み、今日の分は終了した。
 扉を開け、クリーム色の壁伝いに赤い絨毯の上へ出る二人。
 後手に扉を閉じるとそこは壁となって消えた。

「あれはユウトの部屋を掃除しながら見つけているのよ」
「そ、そうじっ?」
「な、なにを驚いているの」
「そんな、うらやま――掃除は交代制とかないんですか? それと、ユウトの部屋も教えて下さい」

「ないわよ、それにユウトの部屋へは今のところアリスの許可がないと入れないわ。
 彼女が扉をロックするようになったから……」
 どうせ召還してしまえばあなたの使い魔なんだからそれくらいいいでしょと言われてシーナも渋々と頷いた。

「でも、まだ決心がついていなくて……」
 首を傾げるスーシィ。
「この間も同じことを言っていたわね、大丈夫……?」
「時々思うんです。彼を使い魔にしておくことがそもそも彼の為になっていないんじゃないかって」
「良い着眼点ね、使い魔は文字通り使いっぱしりなわけで、
 そこに本来使い魔の意志は存在しないわ。彼にそう教えた人もいたはずよ」

「…………」
 すれ違う生徒たちは皆陰鬱な表情を浮かべながら通り過ぎて行く。
 シーナはルーシェの一件が一学年のプライドを傷つけたに違いないと思う。
「逆に言うわ。彼は何故アリスに召還されたのかしら?」
「え……」
 シーナは即答できないでいた。彼とアリスを結んだものは何だったのか。
 そんなことは本人たちも知り得ぬことであろう。

       

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