Neetel Inside 文芸新都
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 テスト前日。
 教室はてんやわんやの作戦会議と賑やかで、現在はあの頭上から落とされる風の上級魔法(雷)に対する策を練っている段階である。

 自分の使い魔が稼いだポイントを無駄にしたくないと、
 セイラがショックから立ち直って来たのを見て、クラスのみんなは闘志にもえた。

 発端となったアリスなんかはそっちのけで作戦会議は進み、
 テスト勉強自体がセイラ以外タブー化されたような状況である。

「空から攻撃されるのに土魔法が役に立つと思うか?」
「全員地中で戦うなら話しは別だ」
「真横にあの攻撃がだせないとは限らない」

 ある生徒は図面で説明し、ある生徒は数値化で説明し、ある生徒は魔法のパターンから説明していた。
 そんな時、開け放たれた扉から生徒の一人が声を大にして叫ぶ。
「みんな聞いて! 今度は私たちの上級生の二学年とあのルーシェが喧嘩だって!」
 蜘蛛の子を散らしたように廊下へ急ぐ生徒たち。敵情視察だと言わんばかりに躍り出る。
 がたがたと机や椅子も吊られるように踊った。
 決闘は一度行うと一ヶ月の禁止を言い渡されるが、今回はセイラが倒されてからまだ六日目。
 早すぎる問題は一瞬生徒たちの心にもしかしたらという期待を抱かせた。

「なあ、ルーシェってやつ決闘のしすぎで退学になるんじゃないか? だとしたら――……」
 廊下に散っていく声はユウトたちの耳元に最後まで届かない。
「……見に行きましょうか」
 スーシィが魔法陣に乗る。
 教室にはアリスとシーナ、カインそれにセイラを含む生徒少しが残っていた。
「いや、僕は残るよ。正直僕らみたいなのが何人束になってもあの子には勝てる気がしない」
「相変わらずの腰抜けなのね、カイン」
 意外にもそれを言ったのはスーシィだった。
「ああ、君に言わせれば僕なんかはその辺の野石だろうさ」
 確かこの二人は最初のクエストで一緒だったとユウトは記憶している。
 アリスは自分のお菓子が取り上げられたような顔をして、眉を曲げていた。

「早く行きましょう」
 スーシィの声に続くいつもの三人。
 ポイントカードの帰還制限時間は開始されるが、クエストは明後日なので関係ない。
「rani pg(座標指定)」
 白幕に包まれると体が一瞬浮いたような感覚に足下がふらつく。
 そこを堪えて、光りに瞑った目蓋を上げると人だかりという光景が目に飛び込んでくる。
「まるでお祭り騒ぎだな……」

 それは言うなら人垣で、奥で何が起こっているのかは皆目見当がつかない有様だった。
 スーシィは手元に杖を構えると、一言詠唱し遠見の魔法を唱えた。
 もやのように空間が白むと丁度良い大きさに映像が浮かんでくる。
 そこには白い輪で囲われた二人が異様なかたちで対峙している。四人はその様子を一心に見守った。

       

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