Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

 喧騒が一瞬で静まり、人集りに溝が出来た。

 そこから中年の男が現れ、悠人はぎょっとした。
 彼があまりにも強大な存在に見えたからだ。

 ホワードと呼ばれた大柄の男は眉間を寄せて唸った。
「(私の魔力をこの歳で見抜いているのだろうか)」

 大きな木の杖を持ち、真っ黒なローブに朱色の縫い込みが施されている。

 ――映画に出てくる魔法使い?

 悠人は急に怖くなった。――ここはどこだろう。僕の家は?

 頼れるのは辛うじて言葉が通じそうな目の前の少女だけだった。
 悠人はとりあえず、大人しくしていることにした。

 しかし、アリスと呼ばれた女の子は平然と物騒なことを口にしていた。

 オーガと戦わせてみましょう、とか、崖から落とせば飛ぶかもしれない。

 そう言って冷ややかな目線を送ってくる。


 これが『頼れる存在』だとは思いたくなかった。

       

表紙
Tweet

Neetsha