場所は変わり、一方では月夜の闇に舞う一つの影があった。
巨大な翼を打つそれは、時折低く唸りながら翼を仰ぐ。
老人はそれに跨り、一喜一憂していた。
「なに? 『そろそろ疲れた』じゃと?
待て待て、主はまだ半刻しか飛んでおらんではないか。
ん? 『嬢ちゃんが寝てしまったのでつまらない』 ワシじゃ不満だというのか?」
そうこう老人が言っている間に大きな影は徐々に下へと降下する。
「まてまて、ワシが悪かった。
だからそんな森の中にだけは置いていってくれるな、
どうじゃこの娘のパンツ、見たくはないかの?」
大きな翼を持ったドラゴンは鼻からぼうと炎を吐くと億劫そうに再び翼を仰ぎだす。
「よしよし、良いぞ。ワシの若い頃のガッツを思い出すわ」
しかし、不意に異変は起きた。
ドラゴンが咆哮のもとに急旋回したのである。
「おおぉ? 危ういじゃろが。なにしとる!
パンツはこれからじゃ。――ぬ? 下か」
見ると高度八百メイルはあるというのに下から火炎球を飛ばす輩がいる。
それも火炎球というよりは人間大の大きさの火炎弾であった。